今夜もずっと君のもの (Page 2)
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「いつまでスネてるんだよ」
俺がシャワーにいく前と同じポーズ、部屋の端っこで壁のほうを向いて体育座りというわかりやすいスネかたをしているノエルにそう声をかけた。
「だってショーイチが」
「俺が?なに」
言いながらノエルの隣、壁に背をもたせれば、おずおずとノエルは顔を上に向けてきた。
整った綺麗な顔をしていながらムゥと子供みたいに下唇を突きだしているのがどうにもアンバランスだ。
「社長に僕が酔うとキス魔になるとか…言った」
「あながち間違ってねーじゃん。実際酒飲んだときのノエル、結構なキス魔だよ」
俺の言葉にムッとしたのか、ノエルはスクッと立ち上がるとドンと俺の顔の横に手をついてきた。
「誰かれ構わずじゃないもん。ショーイチだからだよ!」
青みがかった瞳に至近距離で見つめられると、ドクっと血流があがる。
「わかってるって。でも、変な噂がたったら困るってのは理解できるだろ」
ススス…と壁についた手を滑らせて、ノエルは俺の肩にポンと手を置いた。そのまま体を引き寄せられてトンと互いの胸がぶつかる。チュ…と肩口にノエルの唇が触れた。
「変な噂なの?僕たちが恋人なのは事実なのに?」
「女性スキャンダルも気をつけろってうるさく言われてるだろ。男同士で付き合ってるなんて世間にバレたら大変なことになるよ」
「だって!よくわからないよ。僕たちが仲よくしてるのが女の子のファンは好きなんじゃないの?」
帰国子女だからか、それがノエルの性分なのか、ファンサービスとスキャンダルの隔てが理解できないらしい。
「や…確かに、俺達はセットで仲よさそうにしてたら喜ばれるよ。ただ、それが実際に恋人同士ですってなると話は変わってくるんだよ」
男女だって交際が発覚したり結婚を機に、ファンが離れてしまうことがあるのだ。性的マイノリティについて世間が寛大になってきているとはいっても、まだまだ大っぴらにはできない世の中だ。人気商売であればなおさら。
「とにかく、俺達は仕事仲間。仲はいいけど怪しい関係じゃない。それが世間にみせる俺達の姿なの。せっかく事務所も雑誌も推してくれるのにスキャンダルですべて壊れちゃうの嫌でしょ」
ノエルがモデルの仕事にやりがいを感じていることは知っている。だからあえてそんな言いかたをしてみた。
「うう…」
「ほら、クリスマスイブのファンイベントも控えてるんだし、波風たてたくないでしょ」
これまでもファンイベントはあったけど、俺達2人だけの単独のイベントは初めてで、それがクリスマスイブの夜。
イブの夜は家族と過ごすものじゃないの?というノエルの心配をよそに、チケットは完売。
こんなに予約が殺到したのは初めてだと、事務所の社長も喜んでいた。
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