Hから始まる似た者同士の恋 (Page 3)

*****

「アキ、風邪ひくぞ」

目を開けると、息を切らしたカケルが俺を見下ろしていた。

「カケル…?」

時計に目をやると、時刻はまだ真夜中だった。

「お前、なんで…」

「電話しても出ないから、心配になってタクシー拾ったんだよ」

携帯電話を確認すると、画面いっぱいにカケルの名前があった。

「…もう、寝てるとか思わなかったのかよ」

「まぁ、普段ならそう思うわな」

俺がソファに座り直すと、タケルは隣に腰掛けた。

「あんなことの後だしさ…」

その言葉に、俺はまた膝を抱えた。

話し合おうと自分から口火を切ったのに、いざとなると胸が苦しい。

きっと、同居と解消を言い出されるのだろう。

このままカケルを失ってしまう気がした。

「今朝、ちゃんと話そうって言ってただろ?やっぱ戻るべきだと思ってさ…」

カケルは俺の様子を横目で見ながら言った。

「…一緒に暮らしてんだし、別に明日でもいいじゃん」

ヤケ酒をしていたくせに…と心の中で自嘲する。

電話口の女の声を思い出して、俺は少し顔をしかめた。

「女と一緒じゃなかったのかよ…?」

「は?そんなわけないだろ。お前何言ってんだ?」

真っ直ぐな瞳で否定され、俺は少したじろいだ。

「アキ、もしかして俺が女と外泊すると思ったのか?」

カケルに心中を見抜かれて、俺は慌てて立ち上がった。

「ばっ…ばーか、自意識過剰なんだよ」

テーブルから空になった缶ビールを掴むと、逃げるようにキッチンへ行った。

背後でカケルがソファから立ち上がる気配がした。

「なぁ、カケル…」

俺は空き缶を潰しながら、振り向かずに言った。

「ここ家賃も高いしさ、同居は続けようぜ」

「どういう意味だよ」

缶の潰れる音の合間に、カケルが近づく足音が聞こえる。

俺はなるべく明るい声で続けた。

「安心しろよ。別に1回シタたくらいで、恋人ヅラなんてしねぇからさ」

自分で放った言葉に、虚しさが一気に込み上げた。

「…してくんねぇの?」

声を同時に、カケルが後ろから俺を抱きしめた。

「…カケル?」

背中が焼けるように熱い。

首筋をカケルの吐息がゆっくり撫でた。

「恋人ヅラ、してくんねぇの?」

「は…?」

驚いて俺が振り返ると、カケルが顔を真っ赤にしていた。

「アキ…順番は間違えたけど、俺と付き合ってほしい」

「カケル、それ本気で言ってんの…?」

カケルは耳まで赤くした顔を、大きく縦に振った。

予想もしていなかった告白に頭が真っ白になった。

「も…もし、手ぇ出した責任とか考えてんなら、やめてくれよ」

「そんなんじゃねーよ」

「俺、同情されて付き合うのは嫌な…」

「アキ!」

カケルは言葉を遮ると、俺の両肩を掴んだ。

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