高層階の人形 (Page 2)
そうだ、逃げよう。
そう思ったら最後、俺は迷いなどなかった。
たくさんいい思いをさせてもらったけど、刺激のない生活は俺には向いてない。
ガウンをしっかり着込み、スリッパを履く。
そして、以前リクさんが玄関で鍵のパスワードを打ち込んでいるところをぼんやり見ていたのが功を奏した。
その数字を打ち込むと、いとも簡単にドアは開いた。
そこまではよかった…が、目の前にはこの部屋の主の姿が。
忘れた書類を取りに来たのだ。
「ソラ、どこに行くつもりだ?」
「…!えっと、その…ちょっと、出てみたいなって…」
「契約違反だ。わかってるだろ」
リクさんは、今まで見たことがないくらい恐ろしい顔をして、冷たい雰囲気をまとっている。
予想外のことに頭が回らず、足も動かない。
むしろ、リクさんの剣幕に僅かに手足が震えている。
どうすることも何も言うこともできないうちに俺は両手を大きな片手で掴み上げられ、白い無機質な壁に押し付けられた。
怖い…怖いはずなのにこの状況だけで背筋には甘美な痺れが走り、思わず息を飲む。
恐怖の震えに歓喜の震えが混じり始める。
リクさんは俺の耳元で低く囁き、耳たぶに歯を立てた。
「どうして逃げようとした?何が不満だ、何が足りない?欲しいものはすべて与えてきたはずだ」
「っ……だって、こんな…なんの刺激もない生活…つまらない…」
「刺激ね……よくわかったよ」
リクさんは冷たい声でそう言い放つと俺の両手を掴んだままリビングに行き、俺はそのままソファに投げられた。
怒りが伝わってくるような背中を視線で追うと、リクさんは引き出しからローターを取り出した。
さすが社長、というところか…それは、よく見るピンク色のおもちゃのようなものではなく、黒く高級感のあるものだった。
「これは遠隔操作できるものなんだ。もちろん、私のオフィスからもだ。これで、いつ刺激を与えられるかわからない楽しみを味わえるだろ?」
「え…遠隔…いつのまに、そんなもの…ッ…」
驚いた…けれど、少し甘い痺れのようなぞくりとした感覚が背筋を走る。
そう、少し楽しそうだなんて思ってしまった。
リクさんは、いつもベッドで優しくキスや丁寧な前戯から始めてくれるのに、今日は怒りに任せてリクさんの手の中で振動するそれを俺の下半身に押し当ててきた。
「っ、あ…!…ま、待って…ッ…」
「まだ少ししか当ててないのに、もうこんなにして…この状況に酔ってるのか?…本当に淫乱だな」
しっかりとした素材の布越しなのに強く振動するそれは、確実に俺の快楽を引き出していく。
ガウンの下で、どんどん質量を増していく俺自身を見かねたのか手荒に下着を脱がせた。
そして、リクさんは一度そのローターをソファ下のラグに放るとすでに先走りをしたたらせているそれを掴み、乱暴にしごき始めた。
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