パンドラの部屋 (Page 2)
「はぁ…だる……って、え…?何ここ…えっ…何あれすごい…」
驚きはしたものの好奇心の方が勝ったらしく、ベッドから降りてまるで大人のバザーのような品物たちを物色している。
「奏馬(そうま)!ご自由にお使いくださいって書いてあるよ!」
「何でちょっと楽しそうなんだよ…この事態と部屋の異常さを疑えよ…」
「…ん?まだ何か書いてある。なになに……この部屋は、セックスをしないと出られない部屋です…我々スタッフは監視カメラを使い、別室であなたたちを撮影しています…だって」
「撮影?!…ほ、本当だ…天井の四隅にカメラが…いや、ベッド横の棚にもカメラがある…」
この事態に本当に二日酔いどころではなくなった。
響の言葉に改めて部屋を見回すとあらゆる場所にカメラが設置されている。
今、こうしている間も見られているんだろう。
そうすると、俺たちが眠っているところから起きるところまで見守っていてくれたってことか?
気の遠くなる仕事だな、寝かせておいてくれるなんて優しい…なんて感謝してる場合じゃない。
「響…まず、何でこんなことになってるのか、昨日の帰り道から思い出してみよう」
「そうだね、出られる出られないは置いといて、まずは状況を整理しないと……昨日は確か、店を出た後は一応駅の方には歩いたよね」
「あぁ、その後は……あ!何か誰かに話しかけられたよな?」
「うん…二人組だったかな…何の話だったっけ…」
痛む頭から無理やり記憶を引きずり出していくと、少しずつ昨日のことが浮き彫りになってきた。
そして、ようやくこの部屋の謎を解決する記憶を思い出し、俺たちは顔を見合わせて叫んだ。
「AVの撮影の人たちだ!!」
そう、足元が覚束ないほどベロベロに酔って、歌いながら肩を組んで歩いていた俺たちに話しかけてきたのはアダルトなビデオを作る人たちだった。
なんでも、ゲイ同士の素人映像が撮りたいとのこと。
シラフだったら絶対に断っていたが、俺たちは酔っていた。
しかも、現場に向かう車の中で無防備にも寝てしまったのだ。
「奏馬…どうしよう、俺たちAVデビューだよ。しかも、シないと出られない部屋とか本当にあると思わなかった…」
「俺も実際にあるわけないと思ったけど…でもほら、結構アニメのパロAVとかあるだろ…そういう時代だよ」
もうすでに俺も諦めの境地に立っていた。
その後、一応10分くらいドアをたたき、出してくれと叫んでみても返答はない。
疲れ果てた俺たちは、とりあえず用意されていた食料をきれいに完食した。
「奏馬…もうここは腹をくくるしかないよ。せっかくいろいろ用意してくれてるし…こうなったら、いつもしないことして楽しもう!」
「お前……一瞬ちょっとお前に抱かれてもいいって思ったわ…」
響は楽天家で、あまり人を疑うことをしない。
天然なところはあるが、思いのほか肝が座っていて頼もしい面もある。
慎重過ぎる俺は、そんな響に何度も救われている。
無気力になりかけている今なら尚更、響が格好よく見えて抱かれてもいいなんて少し思ったけど、やっぱり俺は響を抱く側でありたい。
最近のコメント