五線外の声 (Page 2)
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「律、だいぶ歌ったし、そろそろ休憩しようか」
「そうだな。あまり根つめるのもよくないしな」
集中してピアノに向かっていた奏は腕を上へ伸ばして体を解しながら、歌い続けた喉を癒すように水を飲む律に視線を移した。
水を喉に流すたびに細い首に僅かな印影を作る喉仏が上下し、小さな嚥下(えんげ)音が聞こえる。
律の中性的な見た目ゆえか、水を飲み、小さな吐息がこぼれる音一つにも色艶を感じ、奏は律から目が離せない。
そして、潤った唇を拭う律の仕草に奏は自らの欲に火が灯るのを感じた。
本能に従いつつ、普段の態度を崩さないように笑顔を保ちつつ口を開く。
「ね、律。こっちおいで!」
「また、お前は唐突だな」
軽口を叩きながらも素直に来てくれる律に奏は表情をほころばせ、両手を伸ばすと白いその手を引き寄せ自らの膝に律を向き合うように座らせた。
気恥かしさに視線を逸らす律の頬を両手で包み込み、満面の笑みを浮かべながらそっと唇を重ねる。
水を飲んだ後のしっとりとした感触がたまらず、幾度も啄むように律の唇を奪っていく。
その口付けは次第に深くなっていき、舌先で律の口内を開かせると温かなその中で互いの舌を絡め始めた。
静かで狭い部屋に小さな水音と甘い吐息が響く。
呼吸を奪うように時折角度を変えながら口付けつつ、律の華奢な体を少し強く抱きしめて温もりを楽しむ。
ゆっくり何度か背中を撫で、さりげなく律のシャツの中に手を侵入させると、律は小さく身じろぎを見せた。
その僅かな反応も愛らしく、直接背中から下着に指を差し入れ尾てい骨をくすぐる。
「んっ……ン、はぁっ…奏…くすぐったい…」
「ははっ、ごめんごめん。でも律、いつもここ触るとすごい可愛い顔するよね」
「なっ…そ、そんな顔してない!」
「してるよ。今も目がとろんってして可愛い…もっと見たいなぁ…見せてよ、律」
律は長い口付けの息苦しさから唇を離し、奏の言葉に抗議をした。
その様子も奏の欲を助長させるには充分で、尾てい骨に触れている手を下着の中で這わせて愛でるように臀部(でんぶ)を撫でる。
そして、細い体を抱きしめていたもう片手で律のシャツのボタンをいくつか外してだらしなくはだけさせた。
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