俺が『オメガ』になった理由 (Page 3)
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ベッドから起き上がり、うなじに触れる。
昨夜、噛まれたアトに涙がこぼれた。
「…なんで俺なんだよ」
アルファとオメガが結ぶ番契約。
アルファやオメガは第二の性別と言われ、男性と女性以外の性別に『アルファ』『ベータ』『オメガ』が存在する。
オメガは男性でも妊娠することができ、アルファは女性でも妊娠させることができる。
オメガのフェロモンにあてられたアルファは獣のように発情し、同意なく番にすることもあった。
それが今の俺。
ヒートが来るまで部屋に閉じ込められ、ヒートになった途端に抱かれて噛まれた。
発情期のセックス中に、オメガの首筋にアルファが噛めば番となる。
アルファが契約を解消しない限りそれは永遠に続き、『番』以外にオメガが発情することも妊娠することもない。
法律上、兄弟で結婚はできない。けど、番にはなれる。
だけど、これはさすがに──ありえない。
「薬…は、もうムダか…」
中に出されて二十四時間以内に服用すれば妊娠を回避できる。
だけど二十四時間は絶対にたっているだろう。
大量に出された精子で子どもができない方が奇跡だ。
俺はヒート中だったし、確実にデキている。
「なぁちゃん、ご飯できたよ」
いつの間に部屋に入ってきたのか、慧斗が笑顔で近寄ってきた。
ここは慧斗が一人暮らしをするマンションだ。
何度か泊まりに来たからわかる。
いつもなら『ご飯ありがとう』とか笑顔で言うけど、今はそんなことができるわけがない。
「近寄んな」
「…どうして?」
どうしてだと?
無理矢理に犯され、無理矢理に番にされた。
それで怒らないわけがない。
それも『兄弟』でだ。
「自分がしたことわかってんのかよ!」
「わかんない」
「ッ…ふざけんなよ! 俺とお前は兄弟だ! なんで番になんか!」
「あぁ、そのこと」
慧斗はベッドに腰を落として、寂しそうな瞳で俺を見る。
手が伸びてきて、反射的に身体がびくついた。
「なぁちゃ…七星のことが好きだから番にしただけだよ」
「『番にしただけ』じゃないんだよ!」
「どうしてそんなに怒ってるの?」
「怒るに決まってるだろ! 俺らは双子の兄弟だぞ!」
「そうだよ。七星は俺の双子のおにぃちゃんで、俺は七星の双子の弟だね」
なんでわかっててこんなこと…。
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