俺が『オメガ』になった理由 (Page 5)

「そん、なに俺のこと…」

「好きだよ。…ううん、愛してる」

 なんとも言えない気持ちが涙になって溢れた。

「七星も子どもも俺が幸せにしてあげるからね」

「…俺はお前をそういう目で見ることは」

 できない。

 その言葉を言わせないように慧斗は俺にキスをした。

 優しいキスでふさがれて言いかけた言葉を飲み込む。

「少しずつでいいから、俺を好きになって」

「…ああ」

「ありがとう、七星」

 慣れない名前呼びですらどうしたらいいのかわからない。

 でも番になったんだ。

 慧斗を意識することは案外、たやすいだろう。

「…腹減ったな」

「ご飯できてるよ。一緒に食べよう」

「ああ」

 大きくなった慧斗の背中を見上げながら部屋を出る。

 うなじに触れながら、静かにため息をついた。

 まさかこんな形で真実が明るみになるなんて。

 オメガというだけで俺は家を追い出されたわけじゃない。

 オメガなら別の家に嫁がせればいいだけだからだ。

 理由はその家の子どもだという証拠がなくなってしまっていたから。

 俺は遺伝子上、慧斗の双子の兄貴ではなくなっていた。

 それから両親とも親子関係はナシ。

 本当の子どものはずなのに、俺の身体だけに大きな異変が起きた。

 まさかそれが『性転換』によるものだったなんて思いもしない。

 だけど俺が本当に家を出ることになった理由なんて、慧斗が知る必要はないだろう。

「…実家はどうすんの?」

「オメガってだけで追い出した親の跡なんか継がないよ」

「そうは言ってられないだろ。おまえは長男なんだから」

「七星が一緒なら帰るよ」

「じゃあそれについてもおいおいな」

 驚きざまに振り向いた慧斗に俺はほほ笑んだ。

「慧斗、これからよろしく」

「ッ…うん、よろしくね。七星」

 昔から変わらない慧斗の笑顔に俺も笑みを返した。

Fin.

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