初めてはチョコ菓子とともに
夜勤で医局の休憩室で休憩をしている陸人に同級生で同僚の孝義が細い棒状のチョコ菓子でゲームをしようと持ち掛けてきた。誘いを断わるが、チョコ菓子を口にくわえているときに、孝義のほうを見たら、孝義がいきなりゲームを始める。それから、孝義にずっと好きだったとカミングアウトされる陸人。陸人はどう受け止めるのだろうか。
20
「あぁ…疲れた…これから夜勤か…」
医局の休憩室で、コンビニ弁当を開ける。俺の勤めている病院は2人の医師が夜勤対応しているのだ。
「陸人(りくと)お疲れ様。きょうは一緒だな」
にこやかな顔で隣に座ったのは同期の孝義(たかよし)。同じ大学の医学部の同級生で、今はよき戦友だ。
「孝義は、なに買ってきたんだ?ん?あぁ、そのチョコレート菓子か??」
孝義が俺に見せたのは、細い棒状のチョコ菓子だ。
「そっ!そうだ!陸人!これでゲームしようぜ!」
「だれがやるかよ!だけど、そのお菓子はもらう。うまいからな!」
「俺の愛は?」
「知らん!」
孝義は医学部のころから、このようなノリなので、もう慣れた。
「そういえば、来年、吉田が結婚するんだってな」
「聞いた。陸人は披露宴には呼ばれたのか?」
「呼ばれたよ。吉田とも付き合いは長かったからな…孝義は呼ばれたか?」
「もちろん!どう冷やかしてやろうかな~」
このおちゃらけっぷりも相変わらずだ。しかし、こいつは外科医。一度だけ手術の現場を見たことがあるが男でも惹かれるカッコよさがそこにあった。
「だけどさ、お前が外科医とか…その性格でよくなれたよな…」
「この性格だからいいんじゃないかな?陸人は繊細なところあるから内科に向いてるよ」
「まぁ、そうかもな…お前が切ったぶん、俺がサポートしてやるよ」
少し照れ臭くなってそっぽを向いてしまった。
「照れるなよ。ほら、これでも食えよ」
孝義は俺にチョコ菓子を差し出した。
俺は無言で一つ受け取ると、口に入れる。
「…うん…甘い…」
「…陸人…こっち向いて?」
「なんだよ?」
俺は、いわれた通り孝義のほうを向く。すると、孝義は顔を近づけ、俺が口にくわえていないほうのチョコ菓子の先を食べ始めた。
俺が驚いてるのを気にせず、孝義はチョコ菓子を食べ進め、俺の唇まで到達した。
「このゲーム、俺の勝ち!!」
俺は、頭が真っ白になったが、我に返り後ずさった。
「なにしやがる!?冗談でもやっていいことと悪いことがあるだろ?」
「あれ?陸人って、彼女いないんだよね?」
「あぁ、なんでかわからないけどな…」
そう。俺は大学に入った後から全く彼女ができない。女友達でいい感じになる子はいたのだけど、なぜか自然消滅していた。
「まあ、彼女できないようにしてたの、俺だし~」
…はっ??今、なんって…
「陸人のそういうところ可愛いんだよな~。だけど、鈍感すぎだよ…」
そういうと、孝義は俺の後頭部をがっちりホールドして、キスをしてきた。
「んんっ…!!!」
いきなりのキス、俺はパニックに陥った。俺が戦友だと思っていた同級生が、実は俺のことが好きで…しかも男で…どうなっているのだ!!
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