真夏の夜の映写室 (Page 2)

「……この映画、まるで紫苑さんみたいですね」

「えっ…?」

あぁ…ついに言ってはいけない言葉を口走ってしまった。
それでも、一度あふれたこの濁流のような思いは抑えられない。
言いたくない言葉が、どんどん自分の意思に反して出てきてしまう。

「いつまでも、あの人のことばっかり考えてさ…今だって、そのパンフレット見て思い出してんだろ!」

「翔くん…?いきなりどうしたんだ?落ち着いて、客席に聞こえるよ」

紫苑さんが俺を見てくれないことに、驚きながらも平静を保っていることに怒りが込み上げ、立ち上がって声を荒げてしまった。
その衝動のまま、椅子に座ったままの紫苑さんに噛みつくようなキスをした。

「んんッ!…っ…ま、待って…翔く…ッっ…」

何度も何度も角度を変えて口付け、強引に舌を紫苑さんの口内にねじ込んだ。
初めてのキスがこれなんて…内心、自己嫌悪に陥りながらも自分が制御できない。
戸惑いからか、あまり力の入っていない手で紫苑さんは俺を押してくる。
こんなに長年思ってきたのに、拒むなんて許せない。
そんな醜い気持ちで紫苑さんを、きつく抱きしめた。

「俺はっ…ずっと、ずーっとあんただけを見てきた!ずっと…ガキの頃から好きなのに!」

子供が駄々をこねるように言葉を振り絞る。
段々と泣きたくなってきた。
俺の気持ちにまるで気付いていなかったのか、驚きに双眸(そうぼう)を見開き言葉を失う紫苑さん。
俺は本能のまま床の上に、その細い体を押し倒した。

初めての行為、あまり知識のない手探り状態で紫苑さんの服を乱していく。
自分の今していることの実感が湧いてきて、急に緊張感を覚え始めた。
それでも止めることはできず、貪るように簡単に折れそうな首から胸元まで口付ける。
そして、淡い色の頂きを僅かに震える指で触れた。
あの人も紫苑さんのこんな綺麗な体に触れたのかと考えると悔しくて悲しくて、いつの間にか晒された胸元に涙がこぼれ落ちていた。

「…翔くん…僕はね、翔くんのこと好きだよ。君がいてくれる時間は楽しくて嬉しくて、あの人を忘れてる」

「え…嘘…」

「嘘じゃないよ。でも、君を利用しているようで言えなかった」

「っ…俺だって…あの人の死を…利用しようとしてる…っ…」

「ははっ…それじゃ、お互い様だね」

聞こえた真っ直ぐな言葉と俺の震える手を撫で、涙を拭ってくれた優しい温もりと通じ合った心にさらに涙腺が緩む。
結局、拭ってくれる涙を止められないまま、今度は優しく口付けながら胸元から下肢へ少しずつ撫で滑らせていく。
ズボン越しに紫苑さん自身に触れると暖かく、少し固くなっているのを感じた。
俺の拙いキスで、ぎこちない触れ方でも反応してくれているのが嬉しい。

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