先輩、今夜だけ淫らな僕を抱いてください
睦(むつみ)は大学時代の先輩・和久井と偶然再会する。長年、睦が想いを寄せていた相手だ。”酔うと淫乱になる”とうそぶいて、和久井をホテルへ誘う睦。全部酒のせいにして、一晩だけの関係を求めた。こじらせた恋心を抱えたまま体を重ねるが、やがてその嘘はほころびを見せる…。
「…っンはぁっ…」
繁華街の路地裏で、僕は先輩にキスをした。
貪るように下唇を吸いながら、ねっとりと舌を絡ませる。
初めて触れる先輩の唇は、安いレモンサワーの味がした。
「んんっ…ちょっ…お前っ」
先輩は僕を引き剥がすと、少し赤らんだ顔で辺りを見回した。
「誰も見ちゃいませんよ」
「…睦、酔ってんのか?」
「さぁ…」
僕は再び先輩に体を寄せると、今度はスーツのベルトに手をかけた。
「おいっ…何してんだよ…っ」
「キスでスイッチ入っちゃいました。しゃぶらせてください」
「はぁ!?何言って…ぁあっ」
素早く手を入れ、下着の上からペニスを撫でる。
根元が熱を持ち始めていた。
「先輩、ちょっと硬くなってる」
耳元でささやくと、先輩はさらに顔を赤らめた。
「お前、今日どうしたんだよ…」
「僕ね、お酒飲むとダメなんですよ。シタくてシタくてたまんなくなる…」
先輩の耳に息を吹きかけながら答える。
僕の知らないピアスの穴を見つけ、時間の流れが憎らしく感じた。
「先輩…ホテル行きません?」
僕は上目遣いに先輩を見た。
同時に下から持ち上げるように、陰のうを揉みしだく。
「バカっ…揉むなよ…っ」
「タマの裏まで全部舐めてあげますよ…」
すると、先輩の男根がピクッと小さく跳ねた。
「ふふっ、こっちはホテルに行く気になったみたいですよ?」
「お前…っ」
僕は先輩の首に腕を回すと、もう一度深いキスをした。
…どうせ叶わぬ恋なんだ。
酔ったフリをして、一夜限りの夢を手にしよう…。
「先輩、今夜だけ淫らな僕を抱いてください」
僕らを冷やかすようにヒュウっと音を立てながら、ビルの隙間風が足元を抜けていった。
*****
和久井先輩と出会ったのは大学の陸上部だ。
僕の1つ上で、優秀な短距離選手だった。
先輩は僕の憧れて、いつもその背中を追っていた。
これが恋だと知ったのは、先輩が大学を卒業した後だった。
あれから5年。
今はお互い都心でサラリーマンをやっている。
何度か部活のOB会に呼ばれたが、僕は参加しなかった。
一方的な恋心とはいえ、どんな顔をして先輩に会えばいいかわからない。
そうやって逃げてきはずなのに、僕らは今夜再会してしまった。
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