俺様とスレチガイ恋愛 (Page 4)

「潤!? いった…!」

 声を張り上げた瞬間、腰がピキンッ…と痛み彼に寄り掛かる。

 肩を抱き寄せられると、潤は僕を布団の中に寝かせた。

「無理させて悪い」

「…い、や…べつに…」

 気まずい。気まずくないわけがない。

 親友で、彼女持ちの相手とアヤマチとはいえ、最後までしてしまった。

 でもまぁ…いい思い出になったと思えば僕は耐えられる。

「あの、さ…。なにがあったかわかんないけど、昨日のことは気にしないで」

「は…?」

「だって、ほら…。僕のせいで結婚まで考えた彼女と別れられても困るし…」

 そういうと潤は僕に覆いかぶさった。

 そして、まぶたを閉じながら僕の唇にキスを落とす。

「好きなら好きって早く言えよ」

「へ…?」

 潤はそのまま僕の身体を抱きしめて、浮かんだ後頭部を撫でながらささやくように言った。

「そしたらこんな酷いことしねぇし」

「…どういうこと?」

「俺もお前が好きだってことだ」

「…へ?」

 なにを言われてるのかわからない。

 いや、だって潤には交際を始めたばかりの彼女がいるし。

「意味がわかんない」

「なんで」

「恋人は?」

「ダミー」

「…えー?」

 ダミーってナニ?

 偽物? 替え玉? どういうこと?

「恋人のフリをしてもらっていただけだ。それが最終手段だったし」

「最終手段って…?」

「そこまで言わなきゃわかんねえのかよ!」

「わかんないよ!」

 失恋のやけ酒中に来訪されて、そのまま抱かれて、朝起きたらここにいて、しかも『好き』って言って。

 そんなの簡単に理解できるわけがない。

「だって、彼女は…? 結婚も…」

「あの人は会社の先輩で、相談にのってもらってた」

「そ、相談?」

「桃里が俺に告ってこねえからだろ!」

「え、えー…それって僕のせい?」

「ああ」

 そもそも僕を好きとか微塵にも感じられなかったんだけど。

 恋人を作ってはいちいち報告してきて、セックスしたとなれば聞いてもいないのに言ってきて、俺はうまいだの、なんだの…。

 まさか、ガキじゃあるまいし、好きな子をいじめる…みたいな。

「…いや、お前ならあり得るわ」

「あ?」

「こっちのハナシ」

 潤は俺様で、横暴だ。

 そもそも興味ない相手には話しかけないし、恋人よりも常に僕を優先させていた。

 つまり、それは好きな子をいじめる小学生と同じ感覚で、ずっと前から告らせるために発破のようなものをかけていたわけか。

「…はぁ」

 自分のことで一生懸命で気づけなかった。

 今みたいに冷静だったら簡単に分析できたのに、潤を好きだったせいで彼の本質を見ていなかった。

「あー…もう。それはこっちのセリフだよ、潤」

「あ?」

 行為中にすることができなかった、潤を抱きしめるということをしてみる。

 潤の背中に手を回し、彼の首筋に顔を埋めた。

 スパイシーで甘い、高級感あふれる潤らしい匂い。

「好きだよ、潤」

「ッ…当然だろ」

 少し涙ぐんだような潤の声に、僕はそっとまぶたを閉じた。

 こんな横暴で俺様な潤を愛せるのなんて僕だけだ。

Fin.

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