その声で抱いて (Page 2)
これまで男は、基本的に性に奔放だった。バイセクシャルで、どちらでもイケる。心がけているのは、同意のないSEXはしないということと、パートナーがいる相手には手を出さないということ。だから今日、マコトに声をかけられて、ラッキーと深く考えずにホテルまで来たものの、今になって怖気づくような、そんな気分になっていた。
「ガッツくね、君。せめて名前ぐらい…」
「マコト」
「マコト、くんね。俺は…っと、わわっ」
男が名乗ろうとするより早く、マコトの手が力強く男の腕を引っ張り、ベッドに倒された。
マコトは男の上にのしかかり、その身体をギュッと抱きしめてシャツに顔を埋めた。ハァ…と、甘えを織り交ぜたような吐息が、薄いシャツ越しに伝わってきて、男は思わずゴクリと生唾を飲んだ。
「名前、知りたくない」
「え…?」
「アンタの名前、知りたくないから、早く…」
「なんか、ワケありってこと」
そう返して、男はマコトの脇腹あたりをスルスルと撫でた。ビクッとマコトの身体が軽く跳ねた。
(誰でもいいから今夜のお相手が欲しいってわけじゃないのね)と、男は心の中で納得して、グルッと身体を反転させた。今度は逆に、マコトを組み敷く体勢になって、男は言う。
「じゃぁ、マコトくん。どういうのがお望み?」
少し茶化すように聞けば、マコトは両目を腕で覆って、小さく口を開いた。
「マコ…って呼んでほしい」
「マコ?」
そう男が放った瞬間、マコトの顔がカァッと朱に染まった。
「へぇ…」
その反応が少し面白くて、男はマコトの耳に優しく口づけながら、囁いた。
「マコ、服脱がして、いい?」
「ぁ…ん、うん!」
相変わらず目元は腕で覆ったまま、マコトはブンブン!と首を縦に振った。
「マコ…」
「あっ…あぁっ」
「すごいね。名前呼んだだけで硬くなっちゃうんだ?」
衣服を脱ぎさらって、名前を呼びながら下着も脱がせてやれば、マコトは立派に自身を上向かせながらも恥ずかしそうに膝頭をすり合わせている。ツツ…と根元から頂へと指の腹を這わせてやれば、ピクピクとマコトのソレは意志があるようにうごめいた。チラ、と男はマコトの顔を見遣る。やはり目は腕で覆われている。ふぅ…と男は小さく息を吐いた。
「マコは、俺の顔見てセックスする気、ない感じ?」
「…いいでしょ、別に」
可愛い反応をしてくれているのに、こちらが声をかければ途端にツンとした言葉しか帰ってこない。それを少し不服に思いながらも、男はマコトの身体を暴く手は止めなかった。
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