星のみぞ知る
キャンプが趣味の幼馴染の二人、月斗(つきと)と星那(せな)。社会人になってから忙しく、やっと休みになったある冬の日、二人は星がきれいに見える丘にキャンプに訪れた。久しぶりの趣味と景色の美しさと開放感に二人のテンションは自然と上がり…。
「星那、この景色見てみろよ!いやー、やっぱり写真で見るよりきれいだな!」
「本当、こんな景色そうそう見られないよ。それに、この天気ならネットに書いてあった通り星もきれいに見えそう」
目下に広がる木々、夕刻の橙色(だいだいいろ)から藍色(あいいろ)にうつろう空の色を鏡のように映す湖。
深く呼吸をすれば、都会とはまるで違う澄んだ空気。
眺めるだけで、日頃の疲れが吹き飛んでいくような景色が広がっている。
子供のころから一緒に過ごしてきた月斗と星那は、高校に上がったときから付き合い始め、同じ会社に入社した。
二人とも昔からキャンプが趣味だったが、それなりに仕事が忙しく、遠出をするのは久しぶりだった。
昼過ぎごろに出発し、夕方前に到着してたどり着いたこの丘。
テントを張り終え、その隣にレジャーシートに毛布やクッション、つまみや酒を無造作に並べる。
そして、一息ついて見渡した景色の雄大さに抑圧された日常から解放されたかのように、口数多く周囲を散策しては声高に笑いあった。
*****
楽しい時間はあっという間に過ぎ、辺りは紺色に包まれ頭上には宝石箱をひっくり返したように広がる星空。
「すご…こんな星空、都会じゃ見られないよな」
「本当…夢みたいな光景だよ」
テントの横に広げたレジャーシートの上で晩酌を楽しみながら、一粒一粒の星を指差しては星座を浮かび上がらせた。
たわいもない話をしているうちに、自然と距離が縮まっていく。
肩と肩が触れあうと、それまでくだらないことで笑いあっていたのにも関わらず二人とも口をつぐんでしまった。
木々のざわめき以外聞こえない中、見つめあった月斗と星那はどちらともなく唇を重ねる。
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