弟は極度のブラコンでした

・作

「俺…兄ちゃんのこと…好きなんだ…」――その言葉は俺にとっては”家族”としていっているのかと思っていた。しかし、諒は”家族”としてではなく、それ以上の感情をもっていた。居酒屋帰りに諒の部屋に行くと、知らずに媚薬入りの雑炊を食べ、諒に押し倒される。諒は深いゆがんだ愛を兄にぶつける。

「俺、兄ちゃんのこと…好きなんだ…」

「俺も諒(りょう)のこと好きだぞ」

高3の冬。可愛い弟の問いに、俺は笑いながら答えた。俺は、弟として家族として好きだと言ったつもりだった。

そして俺は、10年後に諒がいった本当の意味を知ることになる。

28歳の春。新入社員が入社する季節になった。入社6年目になる俺は、新人育成も慣れてきた。俺の担当は新人の女子社員。

きょうは、担当の新人が仕事に行き詰っているみたいなので、不安などを聞くために居酒屋に連れてきた。

不安や愚痴を聞き、居酒屋の前で別れた。時間は夜の10時。俺のアパートは少し遠いので、この近くに住んでいる弟の家に泊まる予定だ。

それを見越して、居酒屋の場所も選んだのだ。もちろん、弟に許可は取っている。

俺が、大学に入学してから連絡は取り合っていたけれど、会うのは久しぶりだ。

教えてもらった住所に行き、玄関のチャイムを鳴らす。数秒後に玄関が開かれた。

「久しぶり、兄ちゃん。道に迷わなかった?」

「スマホのアプリ使ったから大丈夫だったよ。にいちゃんなめんな?」

冗談をいいながら、部屋の中に入る。部屋の中はきれいに整理整頓されており、居心地がいい。

ソファに腰を下ろし、ネクタイを緩める。Yシャツの第二ボタンまで外すと、やっと仕事から解放されたと感じた。

「居酒屋のメニューじゃ物足りないでしょ。雑炊作ったから食べて」

「ありがとな…あれ、お前に居酒屋に行くっていってたかな?」

「えっ…少しお酒のにおいがしたから、そうかなって思っただけだよ」

「そうか。それにしても、お前の料理はうまいな。味付けがみんな俺好み!」

深く考えずに、雑炊を口にする。諒は横に座り缶チューハイを口にしていた。

「ところでさ、居酒屋で一緒にいた女の人ってだれ?」

突然諒が聞いてきた。俺が、若い彼女でもできたのかと思ったのだろう。

「彼女は、新入社員で俺が指導してるんだ。それがどうしたか?」

そろそろ、彼女も欲しいと思っているけれど、仕事が忙しくて出会いがないのが本音だ。

「諒こそ、彼女は作らないのか?」

「俺には…ずっと好きな人がいるからさ…」

「いったい誰なんだ?両想いになったら紹介しろよな」

「……んだよ…」

「なんだよ。聞こえないよ。俺が知ってるやつか?」

食べ終わった雑炊の器を机に置き、諒のほうを向いて笑顔で聞く。

すると突然、諒が俺をソファに押し倒してきた。俺はアルコールがまわっているため、理解するのに時間がかかった。

「なんだよ、こんな年でじゃれあいか?いい大人なんだからやめようぜ」

俺はおどけながら諒から離れようとする。次の瞬間、自分が弟だと思っていた、いや正真正銘の弟からキスをされたのだ。

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