失恋して実る恋もある
彼以外どうでもいいと思うほどの相手が結婚し、失恋をした猫柳ユウ。再会した後輩の志貴とホテルで一夜を共にするが、彼もまた実らない片思いをしていた。失恋で涙を流す猫柳を志貴は慰めるが、あることから不機嫌になる。そして思いもよらぬ真実を猫柳は知ることに…。
好きな人が結婚した。
なんてよくある話だ。
「ん、んんっ」
「猫柳先輩、辛くない?」
グチグチ…とお腹の中を長い指にかき混ぜられる。
イイトコロをトントンと二本の指の腹が撫で、快楽に身をよじった。
「きも、ち…い」
「よかった。先輩がこんな風に乱れるなんて…本当に好きだったんですね」
これもよくある話で、好きな人が結婚して失恋し、一夜を共にする。
学生時代の後輩、志貴と再会してホテルになだれ込んだ。
「まさ、か…おまえが男イケるなんて、しらなかっ…ああっ」
「俺は初恋のころからずっと一途ですよ」
「そ、うな…のか?」
「ええ。彼もまた一途で好きな人がいて、俺の気持ちも報われませんが…」
初恋からというと、かなり長く片思いしているのだろう。
志貴もまた、俺と同じ苦しみを味わっていたんだと思うと同情せざるを得なかった。
「今日だけは、忘れようぜ。俺も、もう…なにも考えたくねえし」
「…そう、ですね」
志貴には悪いが、俺には誰かを心配する余裕なんてない。
ダサいってわかっていても涙が溢れてきて、後輩なんかに弱いところを見せたくないのに泣いてしまう。
「ひっく…うぅ…」
本当に好きだったんだ。
幼馴染で、学校もずっと一緒で親友だった彼のことが、何年もずっと好きだった。
なのに、職場で出会って数年の女に奪われた。
こっちは十年以上恋心を寄せていたのに、たかが数年の女に盗まれた。
「先輩…」
「すき、だったんだよ。本当に、門倉のことが好きだったんだ…!」
「…先輩」
大きな手のひらが俺の頭を撫でる。
後輩と一夜限りの関係をもったうえ、泣き顔を見られては慰められる。こんなダサい奴を門倉が好きになるはずがない。
あんな綺麗な奥さんを選ぶのも当然だ。
「猫柳先輩、今夜だけは忘れるんでしょう? なら俺だけを見てください」
「し、き…んぅ…」
唇が重なり、角度を変えながらキスが深くなる。
舌が触れ合った部分が痺れるように甘い。流れ込んでくる唾液が自身のそれと混ざり合い、コクリと喉を鳴らして飲み込む。
「んぁ…んっ」
酸素を求めて少し抵抗を見せれば、志貴は少し唇を離して抵抗する俺の手を握った。
指を絡ませ、少ししてもう一度唇を重ねる。
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