魔法では消せない壁

・作

幼馴染として共に成長したアーティとガルニエ。しかし二人は全く別の境遇と身分で友情を築いていた。アーティは王族の子として産まれたが、ガルニエは下町の捨て子。アーティが幼少期に誘拐されていなかったら、この二人が巡り合うこともなかった。捻じれた運命の先、身分の壁を隔てた関係。その一つの夜の物語。

 夜風が頬を掠めるとき、この国の冬の厳しさを再確認する。
 跨がるホウキを握っている手がかじかんで、関節が痛くなってきた。
 たぶん今、鼻先も赤くなっているだろう。そんな格好悪いところをアーティに見られるわけにはいかないし、彼の執事にもまた馬鹿にされてしまう。小汚いだとか、アーティに気安く近寄るなだとか。

 まったく、誰が城の安全を守っていると思ってんだ。

 ガルニエはその執事に昔からさんざん言われた小言を思い出しながら、首に巻くマフラーを鼻先まで引き上げた。白い息を吐きながら呪文を唱えると、指先の赤みが引いていき、寒さによる震えも消えた。今はむしろ春のようだと言えそうなくらい、ガルニエの体は魔法の力で暖められた。

 鳥のように空を滑るガルニエと枯れ枝のホウキ。次第に屋敷の灯りが見えてきたので滑空する速度を緩めた。
 屋敷の中心、主人であり幼馴染みであるアーティの部屋の窓が一番明るく光を放っていた。カーテンが開けっぱなしになっているようだ。

 ガルニエは音をたてないように気をつけて、その一番明るい窓のバルコニーに降り立った。
 ホウキはそこに立て掛けておいて、窓のなかを覗く。こちらに背を向け、机に向かってるアーティがそこに居た。

 彼の手元を照らすロウソクが短くなって、まもなく消えかけるくらいになっていた。ガルニエはそれを指差し小さく呪文を唱えた。シュン、とロウソクの火が消え、室内は天井のシャンデリアの灯りだけになった。

「──誰だ! ……ああ、ガルニエ。お前はまたそうやって……。イタズラしてないで、はやく中に入れ」

 ガルニエは、いたずらが成功した時の笑みを浮かべて、鍵の開いたままの窓から主人の部屋に入った。

「ふん。そうは言っても、ご主人様は悪戯されるのが好きなくせにね。説得力がないよ」

 そう言いながら重厚な赤い布が垂れる天蓋付きベッドに腰かけようとして、自身の衣服が土や血で汚れているのを思い出してまた小さく呪文を吐いた。
 アーティは魔法で一瞬で綺麗な姿になったガルニエに、頬を紅潮させた。

「なさけない顔。アーティ……いや、ご主人様、そんなんで次期国王が勤まるの?」
「そんなことを言うなよ……」

 そう言いながらも自分の名前を呼ばれたアーティは、さらに身体を熱くした。
 立場には雲泥の差が出てしまったものの、幼馴染ゆえに、一緒に過ごしてきた時間はとても長い。国王の後継ぎとして育てられたアーティの思春期も、下町の捨て子育ちのガルニエと二人で一緒に過ごしてきた。正統で純粋な教育から逸れたのは、性の発散くらいだろう。

 アーティは傷ひとつない白魚のような指先を、同じ年齢なのに全く違う体つきのガルニエの心臓のうえに添えた。
 穏やかな呼吸で上下する胸。もう少しその鼓動を感じていたかったが、ガルニエがその細い腕を掴んでベッドに仰向けに寝転ばせた。

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