メイク・ラブ・クエスチョン?
バイトでいいことがあったある日、唯はいつものようにストーカー被害に遭う。しかしいつもと違ったのはストーカーをしていたのは女装をした『男』だったこと。慣れないヒールで転んだ彼を家に連れて帰り手当てをする唯だったが、出会ったばかりの彼がなぜか気になって…。
自分で言うのもあれだが、俺はモテる。
芸能人でもホストをやっているわけでもないのに、ストーカーがつくのはここ数年でお決まり事だ。
そして今日もまた、フラれた子が理不尽に俺に付きまとってくるのだろう。
全国チェーンのしがない大学生アルバイトなのに。
そんなことを思いながら、一息ついたとき、スーツの男性に声をかけられた。
「君の動きはとても効率がとてもいいね。指示も的確でサポートも上手だ」
振り向けば、身長が低く小柄なのにオールバックが似合う、高級感のあるグレーのスリーピーススーツが印象の本社から仕事に来た社員さん。
「あぁ、突然ごめん。店長から君の話を聞いてね。あぁ、私の名前は──」
何を話したか覚えてないけど、さっきまで凛々しい顔で店長と話をしていたその人の無邪気な笑顔に胸が高鳴った。
*****
夜遅く、居酒屋のバイトが終わって帰路についていると後ろから気配がした。
店を出てからずっと、誰かがついてきている気がする。
しかも発展場と言われるこの公園にまで…。
今日のバイトではいいことがあって気分がよかったのに帰りがコレだ。
「はぁ…。俺はしがない大学生だっつうの」
仕事で来ていたあの社員さんとは全く違うただのバイトだ。
また女か、とため息をつきチラリと後ろを見れば、ふわふわの髪の毛にふわふわのスカートを履いた子が一人。
これまたストーカーには向かない『ゴッタゴタ』の服を着ているな…と感心しながら、Uターンするように木の陰になっている別の道に入った。
このまま反対方向に走って逃げればおしゃれした女の子は余裕でまける。
と、思って走り出そうとしたそのとき、
「いやっ…!」
可愛らしい女の子の悲鳴が聞こえ、一瞬だけ足を止める。
けど、これで戻れば女の子に捕まることはわかっていた。
好きな男のためならなんでもするのが女性…。全員が全員とは言わないが、熱狂的な俺のファンはみんなそうだった。
ならこのまま逃げることが一番。
そう思って無視を決め込んだとき、
「いいじゃん、お嬢ちゃんこそここでなにしてんの?」
「こーんな夜遅くに出歩いて…。実は期待してたんじゃないのかなぁ?」
男性の声が二つした。
「やめてくださいっ! 私、急いでるんです!」
「こんな時間になにを急ぐ必要があるってんだ?」
「やめてくだ…ひゃあっ!」
「かわいい声! 耳、感じるんだぁ?」
「ちがっ…んんっ」
これは本当に絡まれているのか、と足を止める。
でも以前にも友達を使って、俺の樹を引くために演技をしていた子がいた。
ならば今回もそのパターンかもしれない。
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