メイク・ラブ・クエスチョン? (Page 4)
俺様ちゃんを背負って俺の住むマンションに連れて帰り…。
「これで大丈夫だろ」
消毒をしてばんそうこうを貼ってやると、彼はベッドの上で不思議そうにばんそうこうを指でなぞる。
「こんなもの初めて貼った…」
「ソウデスカ」
「唯はいい子だな」
この上から目線の発言にもさすがに慣れてくる。
「唯」
「なんですか?」
救急箱をしまった棚の扉を閉じて、彼に振り向くと花が咲いたように彼は口角をあげた。
優し気な雰囲気で、ふにゃりと笑う彼は感謝の言葉をつぶやく。
「ありがとう、唯」
「……、いえ」
反則すぎる笑顔に不覚にもときめいた。
彼の姉、例の婚約者の弟とは思えないほどに可愛らしい。
年上に見えないのに年上とか、転んで涙目になるとか、可愛い以外のなにものでもないだろう。
それに俺は『コッチ』の人間に近いから。
純粋培養の俺様ちゃんにはわかんないだろうけど。
(でも味見くらいは、いいよな?)
下心を抱えながらベッドに寄り掛かる彼の隣に座る。
足が触れるくらい近く、肩は拳一個分離れた距離で。
「ねぇ、なんで自分のこと『俺様』って言ってんの?」
「身長も低くて声も高いから少しばかりの威厳だ。年相応にも見えないし、そのせいでお付き合いしていた恋人ともうまくいかなかったしな」
「へえ、恋人いたんだ? うまくいかなかったのってもしかして夜の方? まぁ、あんたの方が喘ぐからだろうけど」
クスクスと笑いながら、背後から彼の肩に手を伸ばしたとき…
「違う!」
太くハッキリとした高い声が耳に響いた。
意外な反応に空中で手は止まり、触れようとしていた肩を見つめる。
「え…?」
俺様ちゃんは両膝を抱えて身体を小刻みに震わせた。
なにか恐怖があるのか、さっきまでの様子とは大きく異なる。
「…か、彼女のお兄さんに犯されたんだ。それを彼女に見られて別れることになった」
その瞬間、カッと顔に熱があがるのを感じた。
(同じことをしようとしていた羞恥? いや、違う。これは…嫉妬だ)
出会ったばかりの相手に浮かぶ『クエスチョン』。
『なんで』という言葉が脳内に無数に現れる。
なんで、なんで、なんで俺以外のヤツに…って。
「…そうなんだ」
「だからお姉さまに女の格好をして、襲われそうになったら男だと暴露しろって…」
「それで油断ができたら逃げる、と。作戦が典型的だな」
「何もしないよりは効果がある。でも今日は唯のおかげだ。こうして手当てもしてくれて感謝している」
ふにゃりと見せる笑顔に息が詰まりそうになった。
そんな顔をしないでくれ。
だって俺はお前を襲おうと…。
「そんな顔をするな、唯」
「え…?」
俺様ちゃんは俺の頬に手を伸ばして顔を近づける。
そして、ちゅっ…とリップ音をたてて口づけた。
「ッ…!」
その瞬間、自分の中でブツンッ…と音がした。
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