それぞれの過去
耳と尻尾の生えた『ケモノ』と人間は、容姿や体型が少し違うだけなのに、扱いにはまったくの差があった。『ケモノ』の「俺」は青年期を迎え、発情期も始まり、ますます悪行を働くようになる。盗みのために侵入した家には男の人間がいた。その男に無理やり押し倒されるのだが──。
相手が悪かったし、俺の体も最悪のコンディションだった。
「ねえ、なんで勃起してるの?」
そいつは革張りのソファーに転がされた俺に覆い被さりながらそう言った。しかも、心底不思議そうな顔をして。
それもそうだ。俺はこの家に金目のものはないかと窓の外から侵入したケモノ。そんな奴が、盗みにきただけでなく股間を膨らませていたら、そりゃ不思議に思うだろう。
「何に興奮してるの? 窃盗行為? それとも、俺の魅力?」
「うるせえな、いいから退けよっ」
両腕は頭の上でコイツの手によって固定されているし、両足もそれぞれ体重をかけて足を乗せられていて、身動きが取れない。それに、容赦なく重さをかけられていて脛(すね)が痛い。
「うーん、ごめんね。俺、ケモノの言葉、よくわかんないんだ。」
「嘘つけっ、コノヤロウ。そんな人間がいるなんて、聞いたことがねえ。はぐらかしてんじゃねえぞ。おい、こら、なに勝手に……!」
ジジジ……とズボンのチャックを下ろされると、血液を集めた局部がポクサーパンツを押し上げて、こんもりとした山を作っていた。
最近、下半身がムズムズしたり、メスを見ると腹の底から熱が込み上げてきて暴れたくなる感覚がすることが増えた。
あんまり飯を食ってないからイライラしているせいかと思ったけど、腹いっぱいご馳走にありついても満たされなかった。
手足以外の胴体から生えるソレは、意思に反して形を変えるから自分の一部だけど、なんだか気持ちが悪くて、腫れたとしても放置していた。
「きみ、いま発情期? 見た感じ、それくらいの年齢だよね。去勢手術してないってことは野良のケモノということかな」
薄ら笑いを浮かべながら、スリスリと指先で下着越しに腫れた局部を撫でた。何度か偶然経験した時みたいな、モゾモゾした感覚が局部から背中を伝った。
「おい、やめろっ」
ガツッ。頬と拳がぶつかった鈍い音が鳴った。
意外にも思いきりをつけたらソイツの頬を殴ることができてしまった。たぶん、俺の手を固定するのが片手になったからでもあるだろう。
「……きみは野良ケモノ確定だね。しつけのまったくされていないケモノだ。悪いことをしたらお仕置きをされるということを、特別にきみに教えてあげるよ。ついでに、この恥ずかしい膨らみへの対処法も俺が直々に教えてあげる」
口だけに笑みを残して、男はそう言った。
殴ったまま引きそびれた手を掴まれ、ギリリと爪をたてられた。皮膚にめり込んでぴりぴり痛い。また抵抗してやろうと思うより早く、頭上の手とあわせて、男の外したネクタイで結ばれてしまった。しかも、首にくくりつけるように両手を固定された。
「きみ、識別のネームプレートもつけてないんだね。野放しにされすぎでしょ。お仕置きがおわったら施設に連れていってあげる」
「誰がそんなとこ、おとなしく連れていかれるかよ!」
「うるさいよ。騒ぐより、喘いでくれたほうが嬉しいな」
下着を下ろされ、ぶるん、と天井に向く逸物。それを両手で包み込まれ、ぎゅうっと握り上下に動かされた。
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