壊れた二人 (Page 2)
陸斗は俺とは対照的で、物腰柔らかな好青年だ。
それでも教授や学生からの信頼は厚く、誰に対しても分け隔てなく接する陸斗に誰もが好意を寄せる。
学校のマドンナでさえゾッコンだ。
それなのに幼馴染で、男の俺のことが好きだなんてどうかしてる。
「やだっ、リッ、リク! やめ、やめっ」
「僕の気持ち、わかってくれた?」
「わかった! わかったから!」
「そっか。じゃあ付き合ってくれる?」
「は…?」
付き合う?
付き合うって『付き合う』だよな?
「もうしょうがないなぁ」
それが人生を変える一言になるなんて、今の俺には知る由もなかった。
*****
【数年後】
ジャーッ。
お湯を止め、息を吐きながらタオルで手を拭く。
「さて、と。そろそろ帰ってくっかな」
時間を見れば夜11時。
できたての料理の前に座り、アイツが帰って来るのを待つ。
あの日、幼馴染の陸斗に拘束され、抱かれた日。
俺の人生は大きく変わった。
卒業後は家を離れ、贅沢にマンションまで契約していた陸斗は俺をその家に閉じ込めた。
マンションのその一室は、鍵が特殊で部屋を出られない。
窓も固定され、開けるなんて不可能だった。
最初こそは喚いたものの、調教するように体を暴かれ、男を教えられる。
だんだんどうでもよくなり、今ではすっかり慣れたものだ。
就職するはずだった職場にも一度も出勤することなく、俺は好きに家を出られずに陸斗に繋がれる。
親とたまに連絡をさせてくれるが、なぜか就職のこともとがめられず、陸斗と住んでることすら何も言われなかった。
「捕まってる」と言っても信じてもらえない。仕事にも就いてないのに、何も言わない親に最初は不思議に思った。
でも理由は簡単だった。
陸斗が俺を好き。だから同棲している。
陸斗が俺を養う。だから俺は仕事をしない。
それを陸斗が「俺がしたいことだから」と親に言った結果、なぜか納得されて今に至る。
陸斗が俺を好きなのは間違いじゃない。
本当は無職なだけじゃなく、同棲という名の監禁をされている。
逃げることもできず、ダラダラと過ごす日々。
陸斗がその分、働いて俺を養ってくれている。
ただ問題は俺の気持ちだ。
いまだに陸斗を好きだという気持ちがもてない。
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