君の世界に居られるだけでいい。
新庄組の次期若頭候補である組長の息子・新庄佳臣と、新庄組のシマで中古書店を営む高橋瑞樹は、白昼の店舗で身体をつなぐような仲だが、恋人ではない。いつものように、佳臣が瑞樹の店を訪れると、組長である父親から、女遊びをやめるように言われたと悪態をつく佳臣。この関係の終わりを感じた瑞樹だったが…。
とある繁華街の裏路地に、ひっそりと佇む中古書店。
そこへ、上背のある人相の悪い男が、ドアに掛かっているプレートをひっくり返してから乱暴にドアを開けて入っていく。
「いらっしゃい、佳臣(よしおみ)くん」
中古書店店主、高橋瑞樹はにこやかにその男を迎え入れた。
「…脱げ」
佳臣くんと呼ばれた男は、横柄に言い放った。
「…あっ…、うん」
新庄佳臣は、この界隈を仕切っている新庄組の若頭候補で、組長の息子だ。
佳臣がチンピラの頃に店の前で怪我をしてうずくまっていたのを介抱してから、なぜかこんな風に身体の関係を持つようになってしまった。
「ちょっとまってね…」
店の奥の小上がりに向かう。
小さなちゃぶ台とテレビ、扉のついたカラーボックスがおいてあるだけの簡素な休憩スペースだ。
瑞樹がちゃぶ台を片づけて、ワイシャツを脱ぎながら、
「あっ、プレート…」
と呟くと、佳臣はいらだちを隠しもせず「裏返してある」と返す。
一人で店を切り盛りする瑞樹が外出するときには、必ず営業中のプレートを外出中に変えている。
客が入ってくると都合の悪い、こういうときもだ。
「ありがとう」
「いいから、早くしろよ」
「うん、ごめん…」
「モタモタすんな。乱暴にされたくないだろ」
「ご、ごめんね、すぐ脱ぐから…っ」
瑞樹は慌ててワイシャツを脱ぐと、スラックスと下着もおろした。
それを見ると、佳臣は勝手知ったるとばかりにカラーボックスの扉を開け、瑞樹に常備させているコンドームとローションを取り出した。
「ほらよ」
それを瑞樹に渡すと、横柄に座り込んだ。
「親父の奴、自分は女遊びし放題のくせして、オレに女遊びやめろってよ。冗談じゃねえ」
関係ない話を聞きながら、瑞樹は佳臣のスラックスに手をかけて、前をくつろげ、まだ兆しのないペニスを取り出す。
「じゃあ…僕のところにも、もう来られないのかな」
「あぁ、お前は女じゃねえから、うっかり子供ができることもないし、カウントされないんだと」
佳臣の言葉に、瑞樹はビクっとした。
佳臣の父親である新庄組の組長にも、自分との関係を知られてしまっていることに、瑞樹は驚いた。
「そ、う…なんだ…」
「お前が他の男と遊び歩いてるような奴だったり、他の組と関係してるようだったらまた問題だけど、そんなことねえだろ?」
「僕にこんなことさせるのは君だけだよ」
瑞樹は動揺を隠したまま、佳臣のペニスを口に含んだ。
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