犬の恩返し
日々会社でこき使われている、要領が悪くどこにでもいるような平凡な青年サラリーマン。彼が偶然拾った犬が淫乱誘い受けの美青年に!拾ってくれたお礼にと、ご奉仕からエッチなことまでされてしまい…?
俺はどこにでもいるサラリーマンだ。
特別何かに長けているわけでもなく、むしろ要領が悪く容姿も並くらい。
今日も今日とて、同僚のミスを押し付けられて上司にこっぴどく叱られてしまった。
その責任で倍以上の作業を押し付けられてしまい、一人残って残業。
ちなみに、俺にミスを押し付けた同僚はちゃっかり定時であがって彼女とデートだ。
「やってらんねぇ…」
一人そうぼやきながら、言われた仕事を終わらせると俺は疲労で重くなった体を引きずるように会社を後にしたのだった。
*****
近所のスーパーで割引シールが貼られた弁当を購入し、誰も待っていない暗く寂しい一人暮らしのアパートに帰ろうと歩き始めた時…
「くぅ~ん」
俺の後ろで鳴き声がして思わず振り返ると、そこにはそこそこ大きい茶色い毛並みの柴犬が何かを訴えるように俺のことを見つめていた。
「…捨て犬か?」
犬にそう声をかけても犬が応えるわけもなく、ただ俺のことをジッと見つめているだけだった。
(首輪はしてねぇから捨て犬なんだろうけど…やけに毛並みがいいな、コイツ)
捨て犬ならばもっと汚れていてもおかしくはない。
だけど、この犬はやたら綺麗な毛並みをしているし、やせ細っているわけでもない。ただ首輪をしていないだけだ。
「わりぃけど、俺、犬なんて飼う余裕ねぇんだわ。他あたってくれ」
薄情者だと思われるかもしれないが、安月給の男の一人暮らしに犬を飼う余裕なんてあるわけがない。
(ま、あれだけ毛並みが綺麗な犬なら誰かが拾ってくれるだろ)
そんな風に考えて犬に背を向けたが、犬は「わん!」と吠えると俺の後をついてきた。
「だから、俺は飼えねぇんだよ!頼むから他あたってくれよ!」
少し苛立ちをみせながら叫んだけど、それでも犬はめげないとばかりに俺が逃げるように走っても「ワンワン!」と吠えながらついてきた。
そうなってくると、流石にこっちが折れるしかないわけで…
「…降参だ。ただし、俺が面倒を見るのはお前を保護してくれるところが見つかるまでだ。わかったな?」
ビッと指をさして俺がそう言うと、犬は嬉しそうに尻尾をパタパタとさせて「ワンワン!」と吠えた。
(ここまで懐かれる理由がさっぱりわからねぇけど、下手に見捨てるよりかはいいか)
嬉しそうな犬の顔を見てそう考えたが、俺はあることに気付いて足を止めた。
「そう言えば、部屋に犬を飼うためのエサとかなんもねぇじゃん…」
そのことに気付いてしまい、俺は肩をガックリと落とすとUターンをしてスーパーに引き返し、犬を飼うのに必要そうなエサやら道具を買いあさったのだった。
(くそぅ、給料日前で金ねぇのに!)
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