ヤンキーくんと優等生 (Page 4)
「良平、めっちゃエロい顔してる」
「やだ、見ないで……!」
「隠すなよ、どうせ俺しか見てないんだから」
顔の前にかざした両手は、彼の手によって頭上でひとまとめにされてしまう。祐くんの手に押さえつけられている時、ちょっときゅんとしてしまうのはなんでだろう。僕ってちょっとMなのかな。そんなことを思っていると、彼はぐっと腰を進めてきて、思わず声を堪える。
「んんッ!?な、に……?」
「なにぼんやりしてんだよ。ちゃんと、俺のこと見て」
「あっ、やぁ……ッ、そこ、だめッ……んんッ」
さっきまではイイところをわざと外していたのに、今度はそこばっかり突かれる。気持ちよすぎておかしくなりそうで、口の端からは喘ぎがあふれて止まらない。段々大きくなる声に、祐くんは蓋をするみたいにキスしてくる。くぐもった声が、互いの舌の間で混ざり合ってどろどろになっていく。
「あっ、アッあぅ……、ッゆうくん、ゆう、くん……ッ!」
「く……きっつ……、良平……ッ」
「んぅ、んんッ……あっアッ、……~~~~~~~ッ!」
ほぼ同時に達した僕たちは、事後の余韻に浸りながらぎゅっと抱きしめ合った。遠くでテニスサークルがはしゃいでいる声が聞こえていた。
ぼんやりとした視界の向こう側、祐くんが肩で息をしているのが見える。よかった、ちゃんと僕で気持ちよくなってくれて。たったそれだけのことが、純粋に嬉しかった。
「ゆう、くん」
「良平……」
「すっごい、気持ちよかったよ」
「ん……俺も。持ってかれるかと思ったわ」
コンドームを外し、ハンバーガーの入っていた紙袋に投げ入れる。これどこに捨てようか。みんなに悟られないように、ごみ箱の奥の方に押し込んでおかなくちゃ。乱れた服を整えながら、祐くんは気だるげな声で声をかけてくる。
「次の講義、どうする?」
「どうするって……行かなきゃダメだよ。だって祐くん、あと2回休んだらアウトでしょ?」
「あーもう……お前が言うなら行くわ。だりぃ……」
なんだかんだ言って素直な祐くんが可愛くて好きだ。だるいなんて言いながら、僕と一緒の講義はあまり休まない。そんな祐くんが可愛くて笑っていると、彼は不思議そうに僕を見つめて首をかしげた。
「何?なんか言いたいことでもあるの?」
「ううん。なんでもないよ」
「絶対嘘だ!なんかあるだろ、言えよ!」
祐くんの言葉を遮るように、講義終了のチャイムが鳴り響く。僕は慌てて祐くんの手を取って立ち上がった。
「あっほら、あと10分で講義始まっちゃうよ!」
「ちょ、俺の話聞けって!おい良平!」
祐くんの手を引いて、螺旋階段を駆け下りる。遅刻は絶対したくないから、今だけは許してほしい。だるい身体にむち打って走っていると、後ろから
「無理すんなよ!」
と労いの言葉が降ってきて。そういう優しいところが、堪らなく好きだなあと思った。
Fin.
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