元教え子の行為と好意を跳ね返せなかった高校教師の後悔
とある学校の高校教師である松原悠作(まつばらゆうさく)は、生徒である赤崎隼士に告白される。教師として冷たい言葉で告白を断った3年後、悠作は教育実習生として戻ってきた赤崎と再会する。何事もなく迎えた教育実習最終日、悠作は赤崎から1枚のメッセージカードをもらう。そこに書いてあった内容とは…?
「ずっと先生のことが好きでした」
2人きりの空き教室で赤崎のその告白だけが大きく響いた。
*****
『生徒に、しかも未成年の男に手出すほどオレは困ってねえよ』
(あれから3年か…)
とある高校で教師をしている松原悠作は、元生徒である赤崎に告白された日のことを思い出していた。
成績は常に上位。
生活態度は真面目。
同性の友人が多数。
そして高校生らしく付き合っている彼女も居る。
優等生。
悠作にとって赤崎隼士はそんな生徒だった。
そうやって、学校生活でどんな局面でも他の生徒より抜け出て印象の強いからか。
生徒の一人として悠作の記憶から消えることなく、赤崎は居続けた。
「みなさん、おはようございます」
鼓膜の震源へを顔を向けると、学校の中でも上層部の存在である教頭の姿が視界に入った。
(そう言えば、朝の職員会議中だったな…)
現実に戻った悠作は、そのまま教頭の話へ耳を向ける。
「以前からお伝えしたよう本日から2週間、教育実習生が今年も本校に実習に来ます」
連絡事項を簡潔に伝えると、教頭はそのまま職員室の外へ退出する。
(当たったら面倒だな…)
心中で悠作が悪態をついていると、ガラリとドアが開くと再び教頭が中に入る。
「入ってきてください」
その言葉に続いて、リクルートスーツ姿の大学生だろう男女が何人か中に入ってきた。
(オレも行ったな、教育実習)
大学生特有の初々しい雰囲気を懐かしくを思っている時だった。
最後に入ってきた実習生を見ると、悠作は目を力強く見開いた。
(…ウソだろ)
そう呟いてしまうのも無理はない。
最後に入ってきたのは悠作が勤めるこの高校の卒業生で、元教え子でもある赤崎隼士だったからだ。
「本日から2週間、お世話になります。ご迷惑おかけしますが、よろしくお願い致します」
代表して赤崎が挨拶して頭を下げると、他の実習生も彼に習った。
実習生の挨拶が終わると、彼らは担当教師の元へ歩を進めていく。
その様子を悠作は微かに鼓動を乱しながら眺めていた。
1人、また1人と実習生が教師の元へ向かう。そして、最後まで残った赤崎の歩がとうとう動き出す。
一歩、また一歩と歩を進めて赤崎が止まった先は…
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