コハク色の罪の香り (Page 5)

「すごいね。素質、あるよ。トオルさん」

コハクの言う素質とは何か、と沸騰しそうな頭で考えていたら、スっと指が抜かれた。

「ぁ…」

「抜いてほしくなかった?」

悪戯なコハクの笑顔に何も言えないでいると、ズルリと下着を降ろされる。その刺激だけでも、下半身がビクビクと反応して恥ずかしかった。

「こっちのがイイかなと思って」

その言葉と共に、後孔に再びあてがわれたモノは、指よりも随分大きかった。

気が付けば店内には、コーヒーの匂いよりも欲の匂いが充満していた。
入口にソレを押し当てたまま、コハクが優しい声で問う。

「トオルさん。どうしたい?」

「えっ…?」

トクン、トクンと胸が鳴る。欲しいと怖いがせめぎ合って、トオルの額には玉になった汗がキラキラと光っていた。ただわかるのは、コハクの声が相変わらず優しいことと、チラリと視界に入ったコハクの顔がやはり好きなのだということで。

「コハクくん、に、任せる…よ」

欲しいと言えずに誤魔化した、その真意にコハクは気づいたのか。

「かしこまりました」

丁寧な口調で言って、チュ、と額に口づけを落としてから、コハクはトオルのナカに自身を貫いた。

「いっ…!!は…んんっああーっぁ…」

指よりも明らかに質量のあるサイズに、激しい痛みが走って悲鳴にも近い声がこぼれでた。けれど、痛みの奥にある妙な感覚が、ピストンを繰り返されるたびに快感という形になってトオルを責めてくるのだ。

後ろの快感に必死で耐えていれば、コハクの手が前に伸びて、欲を垂らしたソレを握ると前後に扱きだした。

「なっ…やぁっ、待って、コハクくん、まっ…」

「大丈夫だから。イッてよ、トオルさん。僕と一緒にー…」

そう耳元で囁かれて、一気にトオルは快感の渦へと昇りつめていった。

「シャワーありがとう。下着も…」

まだ後ろに違和感を覚えつつ、トオルが店の中に戻れば、先程の淫らな匂いは消えていて、コーヒーの香りが鼻腔をかすめた。

「どうぞ」

コハクから差し出されたコーヒーを口に含めば、一気に現実に引き戻されるような気がした。はぁ…と重々しいため息がトオルからこぼれる。ジ…とコハクは、カップを持つトオルの手を見つめていた。左手の薬指にはシルバーの指輪がキラリと主張している。

「もうすぐ、日付変わりますね。奥さん、大丈夫です?」

「…あー」

椅子に置いていた鞄の中からスマートフォンを取り出すと、妻からのメッセージが何件か届いている。仕事が立て込んでいることを知っている妻は、今日も残業なのだと納得してくれるのだろうか。もしも…と考えかけた思考をトオルは頭を振って追い払った。

「コハクくん、ねぇ。キスしたい」

トオルの声にニコリと笑って、コハクは彼に口づけた。濃度を増したコーヒーの香りに、罪の意識が重なった。

Fin.

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