ライバルだったはずなのに

・作

社会人フットサルチームに所属しているサツキ。ある日の試合後、トイレに駆け込んだサツキの前にはイケメンでモテモテの健(たける)の姿が。試合後の興奮でなぜか勃ってしまったサツキに気づいた健は、サツキをトイレの個室へと連れ込む。一体サツキはどうなってしまうのか!?

「試合終了!」
「「ありがとうございました!!」」
 グラウンドにブザーの音と、野太い叫び声が響き渡った。
 隣に居たチームのリーダーが、嬉しそうに俺の肩を叩いた。
「今日も絶好調だったな!サツキ!」
「ありがとうございます!リーダーのアシストのおかげっす!」

 俺が所属している社会人のフットサルチームは、地域内でもそこそこ強いほうだ。小さいころからサッカーの経験があった俺は、社会人になってもフットサルとして、スポーツを続けていた。
 今日はいつもより調子がよく、シュートが決まりチームの勝利に貢献することができたのだ。
 俺は身長も持久力も足の速さもそこまでないけれど、シュートの決定力だけは買ってもらっていた。ディフェンス陣を抜いてゴールへボールを蹴り、ネットが揺れるあの快感はどんな快感にも勝てないだろうと思う。
「先輩!俺、ちょっとトイレ行ってきますっ!」
 長い試合にたくさんの水分を取った俺は、突然もよおした尿意に気づいて駆け足でトイレへ向かった。

*****

 まだ試合の興奮が冷め切らずに、息が上がったままトイレに到着すると、シンと静かなそこに先客が居た。
「うわっ!びっくりしたぁ!…ってなんだ、健(たける)じゃんか!」
 急いでトイレに駆け込んできた俺に驚いたような顔をした健は、俺の顔をじっと見つめたあと、無表情で目を逸らした。
「…いや、無視かよ…」
 実はというと健に無視されるのは日常茶飯事だった。といっても健に悪気はなく、かなりの無口なのだ。
 健は俺と違って背は高く、さらさらの黒髪に優しそうな目つきをしている。俺と健は年も同じで、同じ時期にチームに加入した。しかも、ポジションも一緒だから、どうしてもライバル視してしまうのだ。
 それに、無口のくせに女子にはモテるらしい。女心ってのは本当にわからないもんだ。

 何となくいたずらしてやりたくなった俺は、わざわざ健が立っている便器のすぐ隣に立ってやった。
 俺に気づいた健が少し嫌そうな顔をして、こっちを見る。
「…なんでこんなに空いてんのに、わざわざ隣くんの?」
「うるせー、俺を無視した罰だ」
 俺はぷうっと頬を膨らませて、怒ったふりをした。本当に怒っているわけじゃないけど、たまには健の困った顔を見てみたくなったのだ。

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