兄恋
佐藤愛希は幼い頃から兄の優希に恋をしている。何度も何度も付き合ってほしい、恋人になりたいと伝えるも、その度に兄弟だからと断られてしまっていた。兄が結婚する日が来てしまうのではないかと焦るあまり、愛希は初めて“好きな人”としてその肌に触れてしまう…。
登場人物
弟 佐藤 愛希(さとう あいき) 22歳
兄 佐藤 優希(さとうゆうき) 30歳
僕は、兄に恋をしている。
「好きです。兄さん。
僕と付き合ってください」
「…またか」
読んでいた本をそっと横に置いて、優兄さんは僕にそう言った。
いつもより強い視線を向けて答えを待つ僕に、呆れたような表情で視線を彷徨わせている。
「何度も無理だって断っただろう。
俺たちは血の繋がった兄弟だぞ」
「…それでも。諦められないんだ」
兄さんは困ったようにため息をついて黙り込んだ。
今度はなんと言って僕を説得しようかと考えているのだろう。
僕は物心ついたときから、ずっと兄に恋をしている。
初めて告白をしたのは兄さんの22歳の誕生日。
当時14歳だった僕は、社会人になるということがとても大人なことに感じていた。
なんだか兄さんがすごく遠くに行ってしまうような気がして耐えられなかったんだ。
だから僕は断られ続けてもなお、こうやって何度もアプローチをしている。
「女の子を見ても、別の男の人を見ても何とも思わない。好きになれなかった。
でも兄さんは違う。好きなんだ。どうしても」
「…」
いつもより真剣な言葉で、引かない本気の僕から目を逸らして兄さんは俯く。胸がちくりとした。
どうしてなんて、わかってくれなんて言えない。
もしも僕が女の子だったらいいよって言ってくれたのかな…なんて。
そういうことじゃないんだろうけど、そんな不毛なことしか頭に浮かばない。
「ごめんね。兄さん」
「…!」
そういうと僕は兄さんを抱き寄せてキスをする。
告白はたくさんしてきたけど、こういう行動に出るのは初めてだ。
…嬉しいのか悲しいのか、涙が出てしまう。
泣いていることに気付いた兄さんは、僕の手を振りほどかなかった。
「ん、ん…」
ずっとずっとこうしたかった。
好きな人と恋人になって、デートをして、キスをして…そんな普通のことが僕には許されない。
それが悲しくて、触れている今が嬉しくて、心がちぐはぐで壊れてしまいそうだ。
触れてしまってからは歯止めがきかなかった。
ゆっくり、ゆっくり舌を入れていく。
驚いて少し力を込めた兄さんを痛いくらい抱きしめて、口内で舌を絡ませてつかまえる。
夢のような時間を、逃したくないんだ。
口の中をなぞって犯すと、いやらしい水音が響く。
少しずつ息が上がっていくのを見ると止まれなくなる。
僕がゆっくり覆い被さるようにして押し倒していくのに、どうしてか兄さんは抵抗しなかった。
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