幸せのおすそわけ
高校時代に所属していた部活の友人が結婚式をあげるため、出席した萩原(はぎわら)。そこにはかつて憧れていた先輩の仲島(なかじま)もいた。再会できたことが嬉しくて二次会で飲み過ぎた萩原はつい「先輩のことが好きだった。今でも好き」と打ち明けてしまい……!?
「おめでとう!」
「おめでとー!!」
今日は高校時代に所属していた部活の友人の結婚式だ。萩原の元同級生だった彼はとても幸せそうに微笑んでおり、羨ましくなってしまうほどだった。
*****
「あれ、萩原じゃねーか!元気だったか?」
「せ、先輩!」
挙式、披露宴が終わり、二次会で和やかな時間を過ごしている萩原に話しかけてくる声があった。振り向くと、一つ上の先輩であった仲島がにっこりと微笑んでいた。何年も会っていなかったが今でもずっと好きな先輩だ。高校時代からずっと、萩原は仲島に恋をしていた。
「オレは元気でしたよ!先輩こそどうでしたか?」
「ん?俺?」
そう言ってメガネを上げながら考える顔はやはりかっこよくて、さらには着ているスーツもとても似合っていて萩原はひそかにときめいた。
「俺は普通にサラリーマンしてるよ。残業多いけどやりがいもあるし、まあまあ元気かな」
「そうなんですね……オレもリーマンしてますけど残業はそんなに多くないというか、その、無理はしないでくださいね!」
「はは、ありがとう」
仲島と再会できた嬉しさからか、萩原ははしゃいで飲み過ぎてしまった。そしてふらふらした足取りで会場を後にしようとしたところで仲島に呼び止められた。
「おーい、萩原」
「な、なんですか?」
「お前、飲み過ぎ。歩いて帰らせるの怖いからタクシー呼ぶぞ」
「え、そんな大丈夫ですって!」
「お前な〜……」
仲島はため息をつき、頭に手をやってしばらくうなっていたが意を決したように口を開いた。
「そんな無防備で可愛い顔して一人で帰らせるのが心配だっつってんだよ」
「え?」
しばらく耳を疑ってしまった萩原だったが、意味が理解できるとじわじわと赤くなり、もしかして、という気持ちでいっぱいになった。
「先輩、それってどういうことですか」
「……お前、わかってて言わせる気か?」
じとっとした目で見てきた仲島だったが、はあ、とため息をついてつかつかと萩原の方へ近づき、ぐい、と顎を持ち上げた。
「萩原。俺はな、高校んときからずっとお前のことが好きだったんだよ。今でも好きだ。今日会ってそれを再確認した。……俺と付き合ってくれ」
「先輩……!オレも、オレもずっと好きでした、嬉しいです……!」
晴れて両思いになった二人は笑い合い、こっそりと手を繋いで会場を後にしたのであった。
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