隠れビッチを落としたい
藤堂は、会社の先輩である湊が好きだった。「おっとりして、ふにゃりと笑うのが可愛い先輩」だったはずが、湊は実は隠れビッチだった。それを知った藤堂は「先輩、俺じゃダメですか?」。遊びでもいい、俺を選んでほしい、そんな藤堂からの告白に湊の答えは…。
「先輩、俺じゃダメですか?」
「藤堂…」
俺のその言葉に、湊先輩はわかりやすく目線を逸らした。
なんて断ろうか考えているであろう先輩に、俺は…。
*****
湊先輩は、俺が社会人1年目のとき、教育担当としていろんなことを教えてくれた。
おっとりした性格と、ふにゃりと笑う姿に、俺はいつしか好意を抱いていた。
恋愛的な意味で。
けど、相手は男だし、受け入れられる可能性は低い。
伝えて、拒否されて、今の関係が壊れるのも怖い。
そう思って、ただの後輩という立ち位置にいる他なかった。
けど、ある日俺は友人と仕事終わりに飲みに出かけた先で、偶然にも見てしまった。
先輩が男と共にホテル街へ消えていくところを。
駅から少し離れた飲み屋街、その奥はホテル街となっている場所で、俺たちのいる飲み屋街と勘違いしてホテル街へ入ってしまったのかと思った。
でも、肩を抱き寄せる知らない男と、そいつを見上げて、いつものふにゃりとした笑顔とは違う、艶かしい笑みを浮かべる先輩。
あぁ…そういう関係なのか…。
恋人がいたこと、その相手が男だったこと。
もう少し早く出会えていれば、俺にもチャンスがあったのかな…。
そんなことを考えてしまった。
でも、その男は恋人ではなかった。
社会人2年目になり今に至るまで、俺は幾度となく同じ現場を見かけてきた。
先輩は見かけるたびに違う男を連れていた。
5人目を見かけたところでようやく、彼らが先輩のなんなのかわかった。
先輩は、どうやらかなりの遊び人のようだった。
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