パンドラの部屋
SNSで度々目にする、何かをしないと外に出られない部屋。それを見るたびに、こんなことあったら怖いよなと笑いあっていた二人だった。しかし、ある日目覚めてみると目の前に広がる見知らぬ光景、開かないドア。その場所から出る方法とは…。
暗闇だった目の前に突如として白色が広がった。
そう、それはまるで寝ているときに蛍光灯を点けられたかのような…。
点けられたかのような、ではない。実際に点けられたんだ。
まぶしさを感じてゆっくりまぶたを開くと、真っ白な天井に真っ白く長細い蛍光灯。
「なんだここ…俺の部屋じゃない…っ、いってぇ…」
場所を確認するために体を起こそうとすると頭に鈍い痛みが走ったため、少し背中を浮かしただけですぐにまたベッドに身をゆだねた。
おまけに気持ちも悪いし、体もだるくて仕方がない。
記憶もなんだかあやふやで……そうだ、俺は昨日幼馴染であり大学の同級生…正直、まぁその体の関係から始まって、そのまま付き合い始めた男と居酒屋で飲んでいた。
しこたま飲んで、その後は…?
「昨日、店から出てどうしたんだ…記憶がないぞ…」
痛む頭を押さえながら天井から隣に視線を移すと、ヨダレを垂らして気持ちよさそうに眠っているその幼馴染…響(ひびき)の姿が。
今度こそこの見知らぬ部屋が何なのか確かめようと、ゆっくり慎重過ぎるほど慎重に体を起こした。
そして俺は、目の前に広がっている光景に絶句した。
開いた口が塞がらないとはこのことだと思う。
「何だよ…これ…」
やっとしぼり出した言葉がこれだけだ。
これしか言えない。
だって目の前のハンガーラックと長机の上には、たくさんのコスプレ衣装に手錠や縄にムチ。
バイブやローター、ご丁寧に媚薬やローションまで店のように品ぞろえが豊富だ。
しかも、ソファ前のテーブルの上に置かれたコンビニの袋には二人分の食料と水も未開封のものが入っている。
だが、決して何にもありがたくない。
「おい、なぁ…響…起きろよ、なぁ…おいって!」
「んー…何、今日学校休みだよ…」
「母ちゃんじゃねぇんだよ俺は!…っ、頭いってぇ…いいから起きろって!なんか俺たちやべぇとこにいるぞ…」
のんきな響に思わず大声を出して頭に響いた。
立派な二日酔いだが、今はそれどころじゃないしシャレにならない。
響も昨日の酒が抜けていないようで、ぐずりながらのろのろと体を起こした。
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