一夜の戯れ
いつものように陰間の仕事をこなす奏。今宵の客は少し変わった客だった。媚薬を塗られ、客だと思って接待していた人物が、本当の客じゃないと知ることになる。そして、本当の客は、名家の御曹司であった。野外で交わる甘美なひととき。その後、奏に驚くことが待っていた。
「旦那様。今宵はご指名いただきましてありがとうございます」
ここは、ある遊楽街の一角。陰間(かげま)たちが、お越しくださる旦那様方に心身ともに尽くす憩いの場。
その夜も、陰間たちは旦那様と絡み合い熱い夜を過ごす。
「おぬし、いまはいくつになる」
「はい…よわい20になりました。しかし旦那様、わたくしとの大人の交じり合いはお好きではないでしょうか?」
「いいや…そなたのような女より女らしい陰間は見たことがない」
抜き襟から見えるか細い首、透き通るほどの白い肌に、今宵の旦那様も俺に魅了されていた。
「おぬし、名をなんという」
「わたくし奏(かなで)と申します。散る花の年になりますので、散る盛りをご堪能いただければと思います」
そういうと俺は、今宵の旦那様に顔を上げて見せる。ザクロで磨いた白い肌、ツバキのように赤い唇、長いまつげに旦那様も見惚れていた。
「そなたが散る盛りとは…もっと早くそなたに会いたかったぞ…」
「これもご縁ゆえ、まずは今宵を楽しみましょう」
俺は旦那様に微笑み寄りかかる。
「玉のような肌だ…吸い付くように手が離れない…」
旦那様は俺の頬に手をかけ、ゆっくりと肩に移動させる。俺も、旦那様が着ている着物をはだけさせていった。
「美しい…おぬし…散るには惜しい美しさよ…」
「んっ…旦那様…ありがとうございますっ…」
旦那様は俺のうしろにまわり、帯を緩め着物をはだけされていき、俺は生まれたての姿になった。
「ここの蕾はどのようになっているかな?」
そういうと、旦那様は、俺の胸の突起を優しく刺激してきた。
「んはっ…そこっ…ぞくぞくしますっ…」
性感帯を刺激された俺は、つい声が出てしまった。
「奏は名の通りいい声を奏でるな…もっと声を聞かせてくれ…」
旦那様は、耳や背中を愛撫される。ある程度楼主(ろうしゅ)に俺の弱いところを聞いているのだろう。
「あんっ…んっ…旦那っ…さまっ…」
俺の体は、さまざまな男性との交じり合いで、スイッチが入ってしまったら全身が性感帯になってしまう体になっている。この、体を目的に散る盛りになるが常連が多いのだ。
「奏、これを塗ってもらうぞ?」
旦那様が取り出したのは、ある塗り薬だった。
「旦那様…んっっ…それは?」
「南蛮渡来の媚薬だ…これを塗って着物を着なさい…主様が待っておる」
「しかし、そのようなことをしたら楼主にしかられてしまいます…」
「楼主には、口添えはしておる。心配しなくていい」
旦那様は、俺の蜜壺に塗り薬をたっぷりと塗りたくった。
塗った場所から熱くなり、どんどん体が火照りはじめた。
「はぁ…ぁぁっ…」
「塗っただけで感じたのか…さすが南蛮渡来の媚薬だ。さあ、早く着物を着るがいい」
俺は、旦那様のいった通り、着物を着始める。着物が肌や胸、股間にこすれるたびに快感におぼれていく。
「んぁっ…んふっ…だんっ…なさまっ…着付けが終わりましたっ…」
「白い肌に、紅色した頬、潤んだ瞳…いい感じに仕上がっているな…さて、主様のところに行こう」
俺は、主様のところに向かうために旦那様とともに、楼をあとにした。
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