巡る想いと快感と

・作

カワタと同僚のツツミはセフレの関係だったが、半年前突然ツツミから一方的に関係の解消を告げられた。
それ以来、ただの同僚として接していたカワタだが、会社の飲み会で珍しく酔いつぶれたツツミを家に送り届けることになる。すぐに帰ろうとしたカワタだったが、ツツミに乱暴に引き止められて…!?

「もう、やめよか。よくないやろこんなん。お互いに」

一方的にそう告げて、その人は僕を手放した。
愛を誓い合う関係ではなかった。
将来を夢見る関係ではなかった。
それでも僕は、もし叶うならずっとそばにいたいと思っていたから。

泣いて、泣いて、泣いて。

枯れるほど泣いて、季節が2度移り変わってようやく、その人へと想いを断ち切れたんだ。

*****

「カワタさん!隣いいですか!?」

新入社員の男はそう言うと、返事も聞かぬまま僕の隣にドサッと腰を下ろしてきた。
まだ1/3ほど残っていたグラスにトクトクとビールが注がれる。

「俺、カワタさん目標にしてるんです!だから今日、カワタさんと話せるのめっちゃ楽しみだったんですよ」

「ええ…キミ、さっき別の人にも同じようなこと言ってなかった?」

「や!カワタさんはほんまに特別です!」

僕の少し意地悪な返しにもまったくものおじしない彼は、まだ入社して1ヶ月だというのに、すっかりこの会社に馴染んでいるらしい。
せっかく注いでくれたビールを拒絶するのは気が引けて、仕方なくグラスに口をつける。
その瞬間、6人掛けのテーブルが2つ離れた先からこちらを見てきた相手とバチン、と目が合った。
胸の中心にゴムボールが落ちて、跳ねるような感覚が走る。
とっさに目をそらしてみたけれど、ヒリヒリと痺れるような視線がずっと刺さっているような、そんな気がしていた。

*****

「カワタ、お前、ツツミと家近かったよな?」

歓迎会という名目の飲み会もそろそろお開きかという頃、スススと僕の脇にやってきた先輩がそう聞いてきた。

「近くといえば近くですけど…」

そう答えながら僕は、2つ離れたテーブルの端っこで突っ伏している、ツツミと呼ばれたその人を見る。
先輩はポンポン、と励ますように肩を叩いて言った。

「ツツミ連れて帰ったってくれる?アイツにしては珍しいぐらいにヘロヘロなってるねん」

嫌だ、なんて言えるはずもなく、僕は仕方なくの愛想笑いで了承を伝える。

「ええっ!?カワタさん帰るんすか!?2次会行きましょうよ!」

顔を真っ赤にして駄々をこねている後輩をかわして、僕はツツミのところへ移動した。

机に突っ伏していたツツミは、わずかに顔を動かすと片目でチラリと僕を見た。いや、睨んだというほうが正しいかもしれない。

「ツツミ、タクシー呼んだから帰ろう。飲みすぎやって、お前」

そう言って、ツツミの腕を軽く掴めば、僕の手を振り払うようにしてからツツミはドサッと肩に腕を乗せてきた。
僕と帰るつもりはあるらしい。

周囲の人間に手渡されたツツミの荷物を受け取って、肩に乗る重みを引きずりながら店を後にした。

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