今日も明日も、君の香り
堀内と俺は、新入社員と教育係という関係で、付き合ってもいる。堀内との約束でデートをすることになったがあいにくの大雨。堀内の部屋で過ごすことになったのだが、言葉は丁寧ながら積極的な堀内に俺は翻弄される…。
「先輩が好きだから、新人研修を頑張りました。先輩、俺が嫌いですか?」
ある日、堀内からさらりと言われた。
新入社員の堀内は人当たりがソフトで真面目。勘がよくて、仕事のコツを掴むのが早いからすぐに結果が表れる。
俺は堀内の教育係として仕事を教えてきたから単純にうれしかったし、好感を持っていた。
「俺が嫌いですか…?」
念を押すようにもう一度言われて、俺は首を横に振った。
新入社員に嫌われてなくてよかったという安心感もあって、嫌いじゃないよ、と答えたら…。
いきなりキスをされた。
好きって、そういう意味か…。
「お付き合いをしてください」
堀内は目の前で深々と頭を下げると、手のひらをピシッと俺に向けて差し出した。
そんなたいそうなことをするなという気持ちで堀内の手を取ってしまったら、ありがとうございます、と満面の笑みを向けられた。
…なんというか、くらくらした。
まあ、始まりはちょっとしたギャグみたいだけど、堀内が嫌いじゃないのは本当だ。後輩として可愛いと思うからお付き合いを始めた。
*****
付き合うようになってひと月がたったころ。
大口取引先との契約へ向かうとき、堀内から改まった声で「先輩」と呼ばれた。
「契約をとれたらデートしてください」
「うん。いいよ」
ガチガチの表情の堀内に、俺は笑って答えた。
三度目の交渉でみごとに契約をとってきた堀内に、約束を実現してください、と言われた。堀内の先輩兼教育係として、約束を破るのはダメだ。
だから、ランチを兼ねてのデートをOKしたのだった…が。
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