今日も明日も、君の香り (Page 2)

「先輩、すみません…。俺、雨男なんです」
待ち合わせの駅で、堀内は男らしい整った顔を悲しげにゆがめた。
「いやあ…、俺も雨男だし」
慰めにもならないと思ったけれど、何かを言わずにはいられない堀内の落ち込みようだった。

俺が駅に着くと、突然雨が降り出した。まさにバケツをひっくり返したような雨で、傘を持っていない俺たちは駅で足止めをくらわされている。
ランチをする予定だった店は駅から遠い。

「あの…、よければウチに来ませんか? 走れば3、4分で着きます」
「いいところに住んでるな。…ていうか、この雨の中を、今、走るのか?」
堀内は笑いながら頷き、大粒の雨が降るなかを走りだした。

俺の返事を聞かずに行くか? …と思ったけれど、駅に置き去りにされるのも困る。堀内の家を知らないのだから。
俺は堀内の大きな背中を追いかけた。

*****

堀内の言うとおり、3分くらいで堀内のアパートに着いたと思う。それでも激しい雨に髪も服もあっという間に濡れてしまい、全身からぽたぽたと水の粒が落ちる。
濡れた状態で部屋には上がれない。こぢんまりとしたたたきに立っていると、ふかふかのタオルを渡された。ほんのりと甘い香りがする。俺とは違う柔軟剤を使っているんだなあ、とぼんやり思っていると、
「服、洗濯します。脱いでください」
と、堀内が洗濯かごを置いた。スウェットの上下が入っている。ひと目で新品だとわかり、俺が着ていいのかと確認しようと隣に立つ堀内を見上げると…。

「ひ…、ひゃあ」

濡れた服の上からウエストの辺りを撫でられた。突然のことに変な声が出てしまった。

「堀内、何してんだよ。服が濡れてて気持ち悪いんだから触るなよ」
スウェットパンツを身に着けた堀内を横目でにらむ。

「シャツが体に張り付いてる先輩って色っぽいですね。…ほら、こことか。くっきりわかっちゃう」
シャツの上から胸の粒を探られた。小さな形を確かめるように指の腹で何度かなぞられて、くり、と摘ままれた。
「ん…、ふ…」
きゅっとした刺激が体を走る。口を腕で覆う。

「こんなにあらわな状態で走っていたんですね。…なんか、危険ですよ」
堀内が口元で薄く笑った。

…危険なのは、お前だよ!

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