陰間茶屋のお話

・作

身も心も、あなたに捧げたい。―――陰間茶屋に売られた五平は、十五夜(じゅうごや)と名を変え、座敷に出るために芸を仕込まれていた。先輩の陰間たちから邪険にされていたある日、藤代新右衛門という大店の若旦那に買われることになった。まだなにも知らない陰間を手込めにするのを趣味にしている男で、十五夜もまた手管を仕込まれることになり…

おれの家は、貧乏だった。

仕方がなく長男と次男、まだ小さかった6番目の弟を残して、3番目と4番目の兄、それから5番目のおれが売られることになった。

兄二人とは違い、身体も小さくて細かったおれは、1人だけ陰間茶屋の砂原屋へ売られた。

おれの名は、十五夜。

本当は五平という名だったけれど、茶屋に売られた時に五平という名を捨てろと言われた。

陰間というのは、男の娼婦が芸や身体を売って金を得る場所だ。

先輩たちから、花魁言葉と歌と踊り、三味線、手遊び、そして寝所での手管を教わる。

おれは鈍くさくて不器用だったから、歌も踊りも三味線も上手にならなくて、先輩たちからは「鈍くさい十五夜」を略して「鈍十」と呼ばれていた。

ある日、店の中がなにやら色めき立って、騒がしくなっていた。

「どうしんしたかぇ?」

「鈍十には関係ありんせん。向こう行きなんし」

シッシと手を払われたけれど、除け者にされるのは慣れているので、その場を離れようと向きを変えたときだった。

「おい、お前!」

まるで、地を這うような低い声がした。

「おい、そこの月の着物!」

呼び止められていたのが自分だと思わなかったおれは、月の着物と言われたことに驚いた。

「わっちでありんすか?」

「そうだ、お前だ。見ない顔だが、名は?」

「十五夜ともうしんす」

男は、おれを上から下まで値踏みするように見た。

「座敷には出てるのか?」

「いいえ…。わっちは…お茶ひきでござりんす」

客の付かない陰間であることを告げると、男は気色ばんでおれに詰め寄ってきた。

「客の相手は一度もしてないってことか」

「ありんせん」

「おい、番頭!」

男の一声に、砂原屋の番頭が血相を変えて走ってきた。

「いかがいたしましたか、藤代様!ああ、十五夜がなにか粗相をいたしましたでしょうか!」

「なにもしておらん。こいつを買うから、寝所を準備しろ」

「へぇ、え…!?十五夜をお買いなさるのですか」

「そうだ。酒と肴(さかな)の膳を置いて、寝所を準備しろ、すぐだ」

「へえ、承知いたしました」

番頭は、ばたばたと走って行ってしまった。

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