仲直りは『×××するまで出られない部屋』で (Page 2)
「じゃあ俺がそっち行くけどいいの?」
「はぁ? ふざけ──」
「アキのほうから来たほうがいいと思うよ。じゃないと俺、酷いことしちゃうから」
「なっ…!」
ゾッとするような目に俺は足を一歩、踏み出す。
(いやいやいや、なんでこいつの言うことを聞かなきゃいけないんだよ!)
踏み出した一歩を戻し、竜也をにらみつけた。俺を捨てた竜也の言うことを聞く必要はない。
妹を好きで、妹も竜也を好きなら、俺は潔く身を引く。べつに他の女性だってかまわない。竜也と付き合うことになったときにそういった覚悟もしていた。
背も高くて優しくてかっこいい竜也は小学生の頃からずっと女にモテた。今だって勤めている会社の社長子息なのだからモテないわけがない。
終業後に会社前で待ち合わせているときも、女性社員に告白されているところを何度も見てきた。
フリーターで男の俺よりも、妹や社員の子と付き合っていたほうが未来はある。
「アキ」
その声にハッとすると、竜也がすぐ目の前に来ていた。
逃げようとしてももう遅い。すかさず手首をつかまれ、壁に体を押し付けられる。
「アキ、どうして来てくれないの? 酷くされたいってこと?」
「どうしてなんてよく言えるよな! さすがお坊ちゃまは違いますね!」
「アキ、怒るよ」
「あーあー、怒れば! 俺だってお前に怒ってんだからよ!」
どうせ俺が連絡をしなくなった理由なんて想像もつかないのだろう。
長い付き合いだけど、俺が怒ったことはないから。ここまでケンカすることだってなかったから。
腕を振りほどこうとバタバタとさせる。だけどそれ以上の力で、竜也は俺の手首まで壁に押し付けた。
「アキ、俺なにかした?」
「ッ…」
「なんでそんなに怒ってるの? それに今までどこに泊まってたの?」
「…関係ないだろ」
「関係あるだろ! 恋人が一週間もどっかに泊まってたら心配するに決まってる! それともアキは俺なんかどうでもいいってわけ?」
それはこっちのセリフだ。
泊まらなきゃ恋人以外とラブホに行っていい理由にならないだろ。心配なんてただの弁論上の言葉だろう。
「ランだったらよかったのにな…」
「なんでそこにアキの妹が出てくるわけ?」
「べつに。…俺らセックスしないとこの部屋から出られないんだって」
誰の悪戯か知らないけど、迷惑な話だ。どうせあくどいことに使われて終わるのだろう。
持っていた紙を竜也に押し付ける。だけどそれを竜也は見ることがなかった。
紙を受け取らずに俺の後頭部へと手を回す。グイっと頭を天井に向けられ、竜也の唇が俺の唇に重なった。
「んんーっ!」
ドンドンッと竜也の体をたたく。より一層頭を押さえられ、唇が深く重なった。
「ひぃいうん…ッ!」
舌が口内を暴れまわり、ぐちゅぅと嫌な音をたてる。口内にたまる唾液が口の端からこぼれ、飲み込んでもお互いの唾液が混ざり合って溢れるばかり。
久しぶりのキスで腰がうずき、抵抗しようとしても巧みな舌使いに力が入らない。
「んぐっ!? ぁあん、あぅ…んぐぅ!」
膝が折れたとき顔をガシッとつかまれ、竜也の舌が口の奥まで入り込んできた。上あごをなぞりながら喉の奥へと侵入しようとする。
(吐く、吐く吐く吐く!)
叩きながら抵抗しても、竜也は離してくれない。口の端が裂けてピリピリとする。
喉の奥にグッと舌が入り込んだ瞬間、俺は思いっきりせきこんだ。
「ぅあっ! ゲホゲホッ、ゴホッ、んぁ…はぁ…」
「はぁはぁはぁ…」
「うぅ…んぐ、はぁ…ん…」
床にぺたりと座り、唾液を床へと吐く。涙や汗がポタポタと落ち、滲む視界で鼻水がプラプラと揺れた。
袖で鼻と目をこすり、口元を拭う。
乱暴なキスなんてものじゃない。食らうようなキスなんてものじゃない。それよりももっと酷いナニカだ。
ひたすら可愛い
ランちゃんになりたい人生でした。
こちらの兄と兄の恋人で飯3杯はいけます。
匿名 さん 2020年12月15日