君の隣でいるために (Page 3)

たいして広くもない楽屋で向かう先なんて限られている。まさかと警戒する僕の予感を裏切ることなく連れてこられたのは楽屋の隅に設置されている簡易的なシャワー室だった。

1人分のスペース程度しかないシャワー室に、細身とはいえ大の男が2人で入れば当然窮屈だ。そんな狭いスペースに僕を押し込んで、タクマはたった今着替えたばかりの自分の私服を脱衣所に脱ぎ捨てた。そうして、当然のように僕の下着も脱がそうと引っ張ってくる。

「タクマ!」

抗議の声を上げればタクマは無言でシャワーのコックを捻った。あまり強くはない水圧でシャワーの湯が飛び出してくる。

「濡れるけど?いいの?」

そういうことじゃない、と頭ではわかっているのに、下着を脱がしてくるタクマの手を制することはできなかった。

中途半端に流れるシャワーが右半身だけを濡らしていく。狭い空間で立ち昇る湯気と2人分の吐息が空気の層を重くして互いの呼吸は自然と荒いものになっていた。

タクマに後ろから抱きしめられる形で、嫌でも体がピッタリと密着する。その肌の感触は知り尽くしている温もりで、その先を期待して胸がドクドクと騒いでいた。

「なあタクマ。どうして俺とセックスすんの」

「リョウはいっつもそれ訊くな。言っただろ。うかつに女遊びもできない。溜まってるから発散させろよ」

そんな理由でタクマに抱かれるようになってもう2年が経つ。この関係がマトモじゃないという認識はあった。それでもこれが、タクマをこの世界につなぎ止めておく鎖なのだと思うと、彼からの誘いを拒否することはどうしてもできなかった。

チュッチュッとシャワーの音に混じってわざとらしいリップ音をたてながらタクマは僕の肩や腕、背中に口づけてくる。

「もっ…タクマぁ。ほんとにこんなとこで、すんの?」

その問いにタクマは答えてくれなかった。

不意に、タクマは備え付けのボディーソープを片手に取る。ソープが絡んでトロリとしたその指が、躊躇なく僕の後孔にツプリと挿し込まれた。

「ひゃっ…」

突然のダイレクトな刺激に思わず声が漏れた。フッとすぐ耳元でタクマの笑い声が聞こえた気がする。

「ここで止めるって言っても、もう我慢できないでしょ、お前の身体」

「はっ…ぁ、ほんと、お前…信じらんねぇ」

性欲処理、という名目で僕を抱くけれど、タクマの愛撫はいつも甘ったるいぐらいに優しい。女性のように濡れるわけではないから、しっかりほぐす必要があるというのもあるだろう。けれどそれを抜きにしても、タクマの前戯はいつも丁寧だ。だから、タクマに触れられただけで僕の体は官能を期待して疼きだす。

2本に増やされた指が、グチグチとナカをかき乱して、とある場所を的確に刺激した。

「あっ…ん…あぁっ!!」

今までの愛撫よりも強い快感にビクッと腰が跳ねて、ガクガクと太ももが震える。崩れそうな僕の腰を後ろから片腕でグッと抑えるようにして抱えて、タクマはその手で前にある僕のたかぶりを握った。完全に勃ちあがっていたソレを上下に扱かれたら、後ろの刺激も手伝って一気に快感の渦が駆け上がっていく。

「イッていいよ」

タクマがそう囁くのと、頭の中がバチバチっと弾けるのがほぼ同時だった。

「…ぁ」

僕から吐き出された欲が、ドロリとシャワー室の壁を汚す。

「リョウ、前立腺ですぐイケるようになったな」

満足そうに言いながら、タクマは壁にかかった白濁をシャワーで流していく。その間もしっかりと僕の腰に回されている腕は、まだ終わりじゃないのだということを教えているみたいだった。

イッた直後で乱れている呼吸を、肩で息をしながら整える。その隙を狙うみたいに、指とは明らかに違う質量のモノが後ろに宛てがわれた。それがナニかなんて、僕が一番よく知っている。

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