籠の中の猫 (Page 2)
「っはぁ…は…何やってるんだ俺…」
何度も疲れ果てるまで自身を慰めた後、よく耳にするようなセリフを思わず口にしてしまった。
虚しさと寂しさが入り混じり、少しだけ涙が出る。
それからの俺は、しばらく しかばねのように日々を過ごした。
獅童さんが出て行って数日が過ぎた頃、部屋のインターホンが鳴った。
誰か訪ねてくるなんて珍しい。よく確かめもせずにドアを開けると目の前には見覚えのある強面が。
夢かと思い、一旦冷静になるためにドアを閉めようとした瞬間、隙間に高そうな靴を履いた足をねじ込まれた。
「おいコラ隼人、何閉めようとしてんだよ。もう俺のこと忘れたのか?」
「い、いや、覚えてますけど…夢かなって…」
「なに寝ぼけたこと言ってんだ、寝言は寝て言え。とりあえず中に入れろ」
しっかりと俺の名前まで覚えているヤクザ…あのお高そうなスーツ姿がきまっている獅童さんが再び俺の目の前に現れ、我が物顔で部屋の中に入ってくる。
そして一言。
「すぐに荷物をまとめろ」
「は?」
意味がわからない。唖然として立ち尽くす俺にお構いなしに勝手にボストンバッグの中へ服を詰め込んでいく。
「ちょちょちょちょっと!!何で?!」
「…お前に礼をするためだよ」
「いや、何でお礼してもらうのに荷物をまとめないといけないんですか!」
「だから…組の…俺の部屋に一緒に住まわせて、これから楽させてやるんだよ。もう勉強もバイトも就職もしなくていい。小遣いも毎月欲しいだけやる」
「それは困るから!せめて大学は卒業しないと!」
何でこの人はちょっと照れてそっぽ向きながら、そんな理不尽なことを言っているのか。
「…かくまったり怪我の看病しただけで、何でそんなよくしてもらえるんですか…」
「お前、筋者(すじもの)をかくまうのがどれだけ危険かわかってねぇだろ…つか…その、あれだ…お前がほしいんだよ…うるせぇな」
「そ、それは…俺のことが好きってこと…?」
「そうだっつってんだろ!」
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