気難しい先輩とオレの相性について (Page 2)
「おい、ここ」
「ここが一番金額以上にキレイだったんです。文句あるなら自分で探してください」
言うと、彼は小さく舌打ちをして、しかしあまりためらいなく靴を脱いで入室した。
オレが探してきたそこは、ラブホテルだった。
ラブホテルは回転率がよいので、普通のホテルと比べると部屋の設備に対して金額が破格的に安いことが多い。
このホテルは同性同士でも入れる上に、深夜十二時以降にチェックインすると一泊六千五百円、最近改装したらしく内装もかなりきれいだった。
ぶつぶつ文句を言っていた早川さんも、部屋に入るとその広さにはしゃぎだす。
いろんなところをあけたり閉めたりしているその姿が楽しそうで、オレは小さく笑ってから、湯を溜めるために浴室を探した。
「風呂も広いな」
「わ、びっくりした。お風呂、入りますよね」
酔いが醒めてそうだったのでそう問うと、「入る」と返事が返ってくる。
じろじろと浴室内を見回す彼を、オレは横目でそっと観察した。
普段あまりに態度がデカいから気付かなかったけれど、こうして見ると彼はかなり華奢だった。
シャンプーの文字を読むためにかがみこんで、邪魔な髪をそっと耳に掛ける仕草がなんだか妙に色っぽい。
場所も相まっておかしなことを考えそうになり、オレは慌てて浴室をあとにした。
しばらく二人でテレビを見ていると、扉の向こうの水音がピタリと止んだ。
湯が溜まったのだろう。
「先にどうぞ」と言おうとすると、被せるように、彼が言った。
「風呂、一緒に入るか?」
「へっ!?」
思わず変な声が出てしまった。
硬直しているオレを見て、彼は「あ?」と見た目に似つかわしくないドスの効いた声を上げる。
「気色悪い反応するなよ。ここ追い炊きないだろ」
オレは別にシャワーだけでも…と言おうとして、しかし、いつのまにかオレは「そ、そうですね」と返事をしていた。
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