誘惑、のち、愛しさ、ところにより快楽

・作

独り暮らしの沢田は先週となりに越してきた綺麗な男性・牧野が気になっていた。ある深夜、びしょ濡れになった牧野が突然部屋にたずねてくる。「泊めてほしい」と言うので迎え入れると、牧野は「お礼に気持ちよくしてあげます」と体を触ってきた。嬉しそうにエッチをする牧野に沢田はどんどん夢中になっていく…。

彼に初めて会ったのは、ちょうど一週間くらい前だったと思う。

引っ越しの挨拶に来た礼儀正しいその人は、男性を表すには少し変かもしれないけれどとにかく驚くくらい色っぽくて、オレは思わずごくりと喉を鳴らしてしまった。

「こんにちは、沢田さん。俺、隣に越してきました、牧野です。よろしく」

そうニコリと薄く笑った顔は、今まで見てきたどんな男性、いや、女性を含めても誰よりも綺麗で、差し出された菓子折りを受け取る時に一瞬触れたスラリとした指に、変にビクリと反応してしまった。

しかし慣れているのか、そんなオレの様子に「ふふ」と緩やかに笑った彼はそれもまた艶やかで、オレはまるで二次成長期の男子みたいに恥ずかしくなってしまったのを覚えている。

生活リズムが違うのか、あれから一度も、オレは彼の姿を目にすることがなかった。

なのに。

その牧野さんが、なぜか、今、オレのベッドに眠っている。

何でこんなことになったんだ!?

と、混乱する頭をそっと押さえながら、オレは、数時間前のことを思い出していた。

*****

「夜分遅くにすみません。今日泊めてもらえませんか?」

常識はずれな時間のインターホンを不審に思いながら玄関扉を開けると、そこにはびしょ濡れの牧野さんが立っていた。

雨で透けたシャツが張り付いて、細い体のラインが露わになっている。

小さく息をのんでから、オレは、つとめて冷静に言った。

「えっと、お隣の牧野さん? ですよね?」
「はい、すみません、色々あって家に入れなくて……今日だけでいいので、泊めてもらえませんか?」
「いいです、けど」

そう言うと、不安げに青くなっていた頬がパァと朱を帯びて、それ以上事情を聞く気にはなれなかった。

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