誘惑、のち、愛しさ、ところにより快楽 (Page 2)

とりあえずシャワー室に彼を押し込んで、なるべく新しい寝間着を出しておく。

オレのダサい寝間着は清廉な雰囲気の彼に似合わなかったけれど、それはそれでそそる…と思ってしまったのは、内緒だ。

ベッドに寝てくれ、と言ったら、「それはできない」と拒否された。

客用布団なんて気が利いたものはない。

酔ったときとかよく床で寝てるし慣れてるから。と言っても、彼はかたくなに首を縦に振ってくれなかった。

引くに引けず困っていると、彼はこう言った。

「じゃあ、一緒に寝ませんか?」
「えっ」
「あっ、嫌、ですよね。俺、男だし」
「いや、そういうことじゃなくて」
「じゃあっ」

そう言って彼がオレの手を握ってベッドへ引っ張るので、オレは、正直それだけでドキリとしまって、バカなので拒否ができなかった。

セミダブルのベッドは、男二人で横になるには狭すぎる。

どれだけ端に寄ってもかすかに彼の体温を感じて、オレはじっと体を硬くした。

今日は眠れないかもしれない。

そう思いながらも静かに目を閉じていると、ふ、と、温度の低い手がオレの腕に触れて、驚いて目を開いた。

動かないでいると、するするとその手はオレの腕を撫でていく。

たまたま触れたにしては不自然だし、マッサージにしては優しすぎて、なんの意図があるのかわからない。

混乱したままおそるおそる横を見ると、こちらを見た彼とぱちりと目が合って、オレはハッと息をのんだ。

色素の薄い彼のヘーゼルがかった瞳が、じっとこちらを見ている。

しばらくのあいだ見つめ合っていると、彼が小さく言った。

「沢田さん」
「っえ、あ、はいっ」
「泊めてくれたお礼、に」
「え……?」
「気持ちよくして、あげます」
「え!?」

考える時間なんてなかった。

次の瞬間、ぐい、と彼は一気に距離を縮めると、ピタリと体を密着させてきた。

そのまま、腕を撫でていた手をオレのTシャツの下に入れてくる。

腹や胸を柔らかく撫でられて、オレは全身がぞわぞわとした。

「ちょ、ちょっと……」
「シ、静かに。目を閉じて、好きなこと考えてください」

好きなことと言われても、色っぽい隣人が自分の体をいやらしく撫でてくれているということ以外もうオレには考えられない。

彼の手が徐々に下腹部にさがってきて、そっと下着の下に差し込まれた時、オレは思考が限界にきて彼の腕を強く握ってその動きを止めた。

「だめ、ですか?」

彼が心底悲しそうに、上目遣いでこちらを見る。

オレは「は」と、短く熱い息をついて、絞り出すように言った。

「ほ、本当に気持ちよくしてくれるんですか」

すると彼は驚いた表情でオレを見上げてから、恥ずかしそうに、こくり、と頷いて、ちゅ、とまるで小鳥のようにオレの唇に口づけた。

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