夢じゃなくてよかった (Page 2)

「あの女性、毎週来てますね…」

深呼吸で黒い気持ちと走り出した鼓動を静める。

「あの人、岩田さんが前にいた店の従業員なんです。何かあると岩田さんに相談してばかりで仕事が進まないっていう話ですよ」
「詳しいね」
「岩田さんがいた店に知り合いが勤めているんです。岩田さんに気があるそうですよー。近隣の店舗では噂になってるって」

俺は黙って笑った。

岩田の丁寧な仕事や、ときおり見せる笑顔を俺は好ましく感じている。
それに身長160cm、何を食べても太れず、童顔と言われる俺には岩田がまぶしく見えた。

片思いばかりの恋愛経験、そのほとんどは岩田のような男をひそかに思ってきたのだ。
そんな俺が岩田を好きになるのにたいした時間はかからなかった。

「瀬川さん! そろそろいつもみたいに助け舟に行ったほうがよくないですか」
「…俺が今、あそこに行ったらお邪魔にならないかなあ…」

あんな美人に追いかけられて悪い気分にはならないだろう。異動先の店に来るというスレンダー美女の熱意がなんだかうらやましい。自分の気持ちをまっすぐにぶつけてみたい…。

「邪魔も何も! 勤務時間ですよ! それに、岩田さんは困ってます」
「きっぱり言うね…」
「恋愛経験少なそうな瀬川さんよりはわかりますよ! 岩田さんの目、光がないですから」

あんまりな言われように笑うしかなかった。

「瀬川さんからの指示を待つときの岩田さん、目をきらきらさせてますからね。だから、早く行ってください!」

ポンと肩をたたかれ、俺はふたりの元へと向かう。俺に気づいた岩田が、あ、という顔になり、隣の美女が慌てて頭を下げた。

「岩田くん、巡回をしてもらえるかな。俺はバックヤードの荷下ろしするから」

俺は岩田に巡回のノートを渡した。スレンダー美女に何か言ってやろうかとも思ったけれど、噂話のネタを提供することになりそうだから止めておく。

「あの…、俺、今日の夜は瀬川さんと約束をしてる。だから、ごめん!」
岩田が突然、美女に頭を下げた。美女は困ったように笑い、失礼しました、と急ぎ足で店を出て行った。
俺は状況が呑み込めず、岩田を見上げた。今日は右耳の上の髪が跳ねている。

「せ…、瀬川さんっ、今日…」
「…俺、岩田と約束してたっけ?」
「いまっ! 今しましたっ」

岩田の言葉の勢いに押されて、俺は、おお、と答える。

「今夜、付き合ってくださいっ」
目を見開き、体を近づけてくる岩田の雰囲気といい匂いに完全に押されて、俺にはうなずく以外の選択肢がなくなっていた。

*****

約束といっても、俺の勤務時間は閉店の夜9時まで。それからバックルームの整理をしていた。岩田が手伝ってくれたおかげで早く終わったけれど…。

「岩田、明日は朝からだったな」
岩田が大きく首をたてに振る。
「その…、付き合うのは別の日でもいいかな。その代わり、今日はおごる。何かほしいものはある?」

岩田の喉が大きく動くのが見えた。

「瀬川さんが、ほしいです」
耳が、きーん、とした。

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