愛おしい年上彼氏
合コンで出会ったことがきっかけで同居することになった秋坂白斗と、春野蓮夜。夜勤がある仕事に就く白斗は三日ぶりに蓮夜に触れたいと言うが、それくらい我慢しろという蓮夜にあしらわれる。それでもめげないのが白斗。あしらった蓮夜も実は白斗を求めていて…。
土曜日の午前中、最寄りのスーパーで特売セールがあるからと出かけてみれば、大雨の影響で客はほとんどいなかった。
まるで貸し切り状態でありがたかった。
レタスは軽いものを選び、豚肉は色目がいいものを選んだ。
広告の裏紙を使ったメモ用紙に書いていたものをすべてカゴに入れ、清算をすませた。
「あら、春野くん。こんにちは。今日は、ひとり?」
「あ、どうも。今日はって、なんですか。俺だって、ひとりで買い物くらい来ますよ」
店を出たところで、声をかけられた。
同じマンションに住む、本川さん。
品のいい笑顔が印象的な還暦を過ぎたとは思えない奥さんで、先日、ご主人が長い入院生活から家に帰って来たばかりだ。
自分で作ったと話してくれたエコバッグを左腕に下げていた。
「うふふ。そうよねぇ。もういい大人がいくら仲がいいからって、いつも一緒とは限らないわね」
「そうやって遊ぶの、やめてくれませんか」
本川さんは、じゃ、またね、とスーパーに入って行った。
両腕に下げたレジ袋いっぱいの荷物を持ち直し、俺は車に乗り込んだ。
*****
マンションに戻り、部屋の鍵を開けようとすると、中から物音が聞こえた。
やっと起きたか。
鍵を開け、部屋に入ると、いれたての濃いコーヒーの香りがした。
「おかえり。朝から出かけるって言ってたっけ?」
「夜勤明けのいつも以上にボーッとした頭に話しても無駄だと思ったから言ってない」
「またそんな冷たいこと言う~!」
「スーパーで本川さんに会った。おまえ、またあることないこと話しただろ」
「春野くんと秋坂くんは本当のおしどり夫婦ねっ!って言われたぜ」
「だから、それが余計なことだっつってんだろ」
夜勤明けで無精ひげにボサボサ頭の男、秋坂白斗と、俺、春野蓮夜は今日もまた朝からこの調子。
男同士でシェアハウスも今や珍しくないとはいえ、こんなやつと一緒に暮らすようになったのはつい半年ほど前のこと。
白斗は俺より2つ年上だけど生活はまるでだらしなく、なんでこんな男を好きになったのかと聞かれれば、その理由はいまだわからない。
同じマンションに住む本川さんにどうして俺たちのことがバレたのかというと、白斗のバカが、「何かあったら一緒に住んでる連夜に連絡してください!俺の嫁なんで!」などと口走ったからだ。
救いだったのは本川さんが男同士の恋愛やら何やらに壁を感じていなかったことで、「お似合いだと思うわよ」と微笑まれたときには軽く笑い返すしかなかった。
それから、ときどき、お茶会に招かれたりと、本川さんとは親しくさせてもらっている。
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