無自覚恋愛 (Page 2)

俺と、ゆずきが母にも父にも誰にも言えない関係になったのは、大学に入って三年目のこと。

一緒の大学に行こうね、なんて、そんな仲がいいわけでもなかった。

だからといって仲が悪いかといえば、そうでもなく、たまたま行きたい大学が一緒だとわかってからは互いにわからないところを補うかのように勉強を教え合ったりした。

一卵性の双子でも、俺より、ゆずきの方が背が高いし、球技も得意。

俺だって水泳なら、ゆずきには負けないって妙に張り合ったりしたけど、なぜかモテるのは、ゆずきだった。

そんな弟が、二十歳を迎えた夜、母さんが友だちと旅行に行ってるそのときを狙い、俺を襲った。

襲っただなんて、そんな大げさなことじゃないでしょ、とかって、ゆずきは言うけど、俺はまさかそんなことになるなんて思ってなかったし、合意した覚えはなかった。

ただ、ゆずきは優しかった。

ここをこうするとね、すごく気持ちよくなるから、みつきは何もしなくていいから、って。

昼間、同級生たちと近くの公園でバスケットボールをして疲れてた俺は、うんうん言いながら、……ああ、もういいか、それは過去の話だ。

だけど、それから、ゆずきは俺と、そういうことをするようになった。

抗えない俺。

抵抗してるんだけどなぁ。
怪しい薬とか使われてる感じはないのに、なんでだろ?

うーん。
わからない。

そもそも、ゆずきはこの前、彼女ができたらしいって話じゃなかったっけ?

「おはよう!宮寺兄!」

「……なんで俺の方がおまけみたいな呼び方するんだよ、赤城」

「いやー?なんとなく?」

講義中に誰かのスマホからレゲェ音楽が流れて気まずくなった教室を明るくした男、赤城は今日も元気だった。

「ゆずきとは今日も一緒じゃないんだな」

「知らねーよ。兄弟だからっていつも一緒なわけないし」

「でも双子ってさ、なんか神秘的な何かがあるらしいじゃん。おまえらにはないわけ?」

「飯食ってて、ソースが欲しくなったら、あっちもそうだったってことはある」

「未来を予知したりは?」

「どこのSF映画だよ」

「っていうか、前から聞きたかったんだけど、みつきを合コンに誘ったら、ゆずきがすっげー拒否してくんの、なんで?」

「さぁ?」

「おまえら顔面偏差値も上位だし、そういうもんかな?」

「知らねーよ」

赤城とは何も考えなくていいから、一緒にいてラク。

合コンの誘いはうざいけど、いつかきっと運命のお姫様が俺を迎えに来てくれるらしいから、将来は嫁さんの尻に敷かれるの決定だ。

「今日は昼までだっけ?」

「そー。昼からはバイトだったけど、マジでレポート提出やばすぎて、おうちでパソコンとデートだわ」

「大変だな、みつきも。わかる。わかるぞ、俺も今日の合コンに賭けて二限目からはサボるつもりなんだ!」

天高く拳を突き上げる赤城は少し輝いていた。

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