無自覚恋愛 (Page 4)
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大学生活も残り少なくなってきた。
就職先も見つけなくちゃいけないし、単位もきれいに取っておかなきゃいけない。
成績は悪くもないけど、よくもない俺は、やりたい仕事も今のところ特にないから、どうなるのか将来も心配だ。
「っし、レポート、一つ終わり」
ゆずきに勧められて買ったパソコンの性能が抜群によくて、今まで従兄弟の古いパソコンで我慢していた俺、遅れてるなぁって思った。
時代はつねに最先端を狙っていけってやつだ。
「みつきー、レポート終わった?」
「あと二つ分あるけど」
「そ。じゃ、終わるまで待ってる」
「うん……うん?俺、おまえと何か約束してたっけ?」
「母さんいないし、ふたりきりだからセックスしようかなって」
「……は?」
「みつきのこと誰にも取られたくないから」
すとん、と俺のベッドに腰かけたかと思うと膝を抱えた、ゆずき。
キーボードを叩いていた俺の手が止まる。
「なぁ、ゆずき。おまえ、そうやって俺のことからかってるけどさ、何にもならないからな?」
正面から、ゆずきに向き合う。
今まで流されっぱなしだった俺も悪いけど、いつまでもこんなことしてちゃダメだ。
「みつきは俺のこと、嫌い?」
「嫌いじゃない、でも」
「俺、ずっと、みつきのことが好き。みつきとするキスが好き。セックスだって、みつきじゃないと気持ちよくない」
「ゆずきは俺と違って社交的だし物怖じしないし、男の俺なんか選ぶの、違うと思う」
「俺はみつきがいい。誰が何て言おうと、みつきじゃなきゃ嫌だ」
「何にもならないんだぞ。俺なんかを、そういう意味で好きになっても」
「告白してくる子、みんな違った。女の子も、男も。全然ちがう。何でか、わかる?みつきじゃないからだよ」
ベッドから立ち上がったゆずきは椅子に座っていた俺の腕を引いた。
反動でベッドに投げ飛ばされる形になった。
「どうしてわかってくれないの、みつき。俺たち、ずっと一緒だって言ったじゃん」
「それは子どもの頃の……」
仰向けになった俺に、ゆずきが覆い被さってくる。
俺の言葉が途切れたのは、ゆずきの唇が俺の唇を塞いだからだ。
「好きだよ、みつき」
泣きそうな顔をする、ゆずきに俺は弱い。
思えば、最初にキスされたときだって全然こわくなんかなかった。
「みつきも、俺のこと好きだよね」
「おまえよりは……そうなのかもしれない」
ゆずきの首に腕を回す。
ぐっと引き寄せて、今度は俺からキスした。
本気だと思った恋愛は、まがいものでしかなかった。
ゆずきが言うように、俺もゆずきが好きだ。
認めてもいい。
俺だって、ゆずきをほかの誰かに取られたくない。
「みつきの愛って、重いね?」
「悪かったな」
ふはははっ、目を細めて、ゆずきは笑った。
同じ顔でも、俺はこんな風に笑ったことがあったかな。
「俺、知ってた。みつきが俺のこと、すごく好きだってこと」
「ん……、バカ、そこ……!」
ゆずきの右手の人差し指が俺の唇をなぞって、喉をなぞって、胸を撫でる。
ゆっくり落ちていって、股間に触れた。
「感じやすいところも好きだよ、みつき」
「誰のせいだよ、誰の……」
少しにらむようにして言うと、ゆずきの口元が緩む。
俺から離れたゆずきは服を脱ぐ。
俺も起き上がって服を脱ぐ。
「やっぱ、レポート、手伝ってもらうからな」
「うん」
改めて向き合い、俺たちは、ねっとりとしたキスをした。
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