誕生日は解禁日
大学生の千紘(ちひろ)は、バイト先の2歳年上の先輩・樹(いつき)と付き合っている。千紘の20歳の誕生日に、1年前に交わした約束がついに解禁となり、期待に胸を踊らせる千紘。しかし実際は千紘の妄想通りには進まず…?
ようやく、やっとこの日が来た…!
記念すべき20歳の誕生日。
今日、僕は初めて樹くんとえっちなことをする。
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バイト先の先輩で、彼氏でもある樹くんのアパートの一室。
樹くんがコーヒーを淹れてくれているのをソファで待っている間、歓喜で震えながらもこの1年のことを振り返る。
今から1年前、樹くんと付き合うことになった。
僕のバイト先は料亭のような場所で、着物テイストの作業着を着ての接客だ。
それを着るのに初日から悪戦苦闘していた僕に優しく着させてくれたのが樹くんだった。
「大丈夫?こうやって着たら簡単だよ」
「は、はい…!ありがとうございます」
(うわ、すごいカッコいい人だ…)
樹くんは僕の教育係として仕事内容も丁寧に教えてくれて、すぐに仲よくなって好きになったのも早かった。
実質一目惚れみたいな感じだったけど。
でも長身イケメン(+某一流大学在学中)の樹くんが、男の僕と付き合ってくれる訳はない…と思いつつ、19歳の誕生日にわざわざお祝いをしてくれた樹くんにダメ元で告白した。
奇跡的にオッケーをもらい、僕はその時幸せすぎて卒倒しかけたくらい。
(樹くんが支えてくれて、興奮でさらに倒れそうになった)
が、問題はここから。
樹くんは自分より2個年上で当時21歳、普通の大学生ではあったけど、やたら律儀で真面目な性格の持ち主。
そこが好きなところではあるけど…。
「千紘が20歳になるまでは清いお付き合いをしよう」と今時大学生がそんなこと言うか?というようなセリフを吐いた樹くんは、僕がどんなに強請ってもキス以上のことはしてくれなかった。
正直押せばどうにかなるだろうと思っていた僕は、この一年あの手この手で迫ってみたがどれも全滅。
僕だって健全な男子大学生だ。
恋人同士がする、あんなことやそんなこともしたい。
樹くんだってそのはず…。
なのに今までキスしかしてくれなかったのは、他に好きな人がいるのかも、とかやっぱり男は無理だと思ったのかな、とか色々勘繰ったりもした。
でもそんな気配はなく、僕のことを大事にしてくれてこまめに連絡もくれたしデートも色々と付き合ってくれた。
別に僕だってヤりたいだけが目的で樹くんに告白したわけでもないし、でも好きだからキス以上のこともしたいって思うわけで…
そんな葛藤を抱えながらこの1年をなんとか乗り越え、僕は今日無事20歳になった。
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