檻を挟んだ番
僕は遺伝子の変化によって生まれたケモノの研究施設に務める飼育員の一人、山田(やまだ)だ。新人の僕の担当はウル、という狼のケモノだった。僕自身、彼の儚(はかな)い印象にひかれており、彼も僕を愛してくれていた。けれど、ウルは外から出れない。できることは僕の仕事である、彼の性を晴らすことだけ――。
「ウル、来たよ」
「ああ…君か。いつもありがとう」
僕はこの研究施設でケモノと呼ばれる遺伝子の変化によって生まれた人の姿をした動物の面倒を見ている。
彼らはここから出ることなく一生を終えるのだ。
「ウル、ご飯持ってきたから置いとくね」
「助かるよ」
端正な顔立ちに整った毛並みはこの檻の中では珍しい存在だった。
皆、徐々にこの狭い世界の中での人生に疲れてしまうからだ。
「食べ終わるまで待ってるから」
僕は一度、彼に助けられたことがある。
*****
それは、隣の部屋のケモノが暴れたために僕が命の危機に脅かされた時だった。
(死ぬ)
ウルは僕のほうに出てきて、そのケモノから身を挺(てい)して僕自身を守ってくれた。
それ以降、僕は彼にひかれていることに気が付いた。
*****
それ以降、僕と彼は禁じられた恋を続けていた。
この檻を超えることができなくても、せめて彼のためにできることをしてあげたい。
それが、彼と交わるという行為だった。
「あっ、ウルのおおきいよぉ!奥、ガンガン突いてぇ!」
「…くっ、いつもこんなことばかりさせて、すまないな」
「いいよ…っ!発情期、だよね」
ケモノにも発情期が存在する。
特に今の時期は彼もサカりの時期らしく、いつも以上にモノが硬かった。
「あっ、ああっ、き、きもちいい、よおっ!」
「俺もだ…ああ、好きだ、好きだよ、お前が好きだ、山田」
彼は甘い声でそうやって愛をささやくと、大きくてざらりとした舌で僕の体を愛撫する。
その感触がとにかく、癖になるのだ。たとえて言うのであれば、体をこすられているかのような感覚で、特にこの舌で乳首を舐められると、気持ちよさで体が跳ねてしまう。
「あっああっ!」
「頼む、甘い声を出さないでくれ…俺の中の本質が、抑えられなくなる」
「大丈夫だよ、だから、もっと、ウルをおくれよ」
僕は申し訳なさそうな彼の言葉に反し、彼を求める。大きなものを下半身の大切な穴が、飲み込んでいる。
痛い。けれど、それでも、君が欲しい。
だから僕はとにかく激しく腰を振った。彼に気持ちいいと思ってほしいから。彼にもっと僕を求めてほしいから。ああウル、なんで外に出ることができないの?君はこんなに優しくて、穏やかで、とても、綺麗なのになぁ――。
「…がああっ!出る!出る、ぞ、山田…っ!」
「いいよ、出せるだけ…っ!出してよ!ねぇ!」
僕は彼のために腰を振り続けた。彼のやわらかい毛並みが肌に当たり、くすぐったいのもまた感じるポイントの一つだった。
「ああ、好きだよ、好きだ。ウル、ウル…っ!」
「…ありがとう」
そう言って彼は僕の中に精を放った。
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