隣、あいてますよ! (Page 2)
迎えた引っ越しの日、念のため会社も週末からさらに3日間休みをもらったのでゆっくりと片付けもできる。対した作業もないけど、初めての一人暮らしなんだからと、上司が多めに休みをくれたのだ。
休みを合わせてくれたリョウと、新居の最寄り駅で待ち合わせをしていた。引っ越し業者の対応はひとまずリョウ君やってくれることになっている。実家から出発して電車に揺られて小一時間。僕の新しい住まいは、駅からも徒歩15分、乗り換え一回30分で家から会社までという快適な環境だ。
駅で落ち合ったリョウと2人で近所を見て回ってから、家に向かうことになった。近くにコンビニが1軒と、コインランドリー、少し先には地元っぽいスーパーもある。
「このまま買い出しいこう、そんで俺の部屋でお祝いしようよ」
料理好きなリョウの手料理は過去にも食べたことがあるが、とても美味しかった。今日も手料理を振る舞ってくれるつもりなんだろうか?期待に胸を躍らせ新たな家路についた。
「あ、これよーちゃん好きなやつじゃない?」
「あっ、ほんとだ!うちの近所もう売ってなかったんだよ〜!よし、めっちゃ買ってこ」
「あっ、リョウ君僕それ苦手なんだけど…」
「知ってるって〜大丈夫!俺の作るのならよーちゃん食べられるよ」
新生活に不安はつきものだというが、リョウが一緒なだけで期待に胸は膨らむ一方だ。たわいない会話にも心が弾む。
帰宅して、リョウ君の部屋に行く前に自分の部屋を開けてみると、なんだか様子がおかしい。
——あれ?なんでこんな服だらけなの?こっちのはリョウ君の……?
ひとまず荷物を置いて、待っているリョウに聞いてみようと隣の部屋のドアをノックした。
「リョウ君ー?僕の部屋の荷物どうなっての……?!」
ドアを開けてみればそこには、驚きの光景が広がっていたのだ。
「え、ベッドでかくない?っつか開けて目の前ベッドってどういうこと?」
「よーちゃんの引っ越し決まってからそっこー買い替えたんだ!」
キングサイズだというそのベッドは、決して狭くはないリビングのど真ん中を陣取っている。
「これなら、よーちゃん一緒に寝ても全然広々だよ!」
寝相の悪い陽介には、大変ありがたい話だがどうして一緒に寝る前提なんだ?と首を傾げているとリョウに手を引っ張られて、そのままベッドに放り込まれた。
「ちょっと!まだ寝ないよっていうか手も洗ってないし……」
言いかけた僕の手をリョウはうやうやしく握りしめると、跪いてこう言ったのだ。
「やっとこの日がきたんだね…」
手の甲に口付けると、上目遣いに俺を見上げうっとりとした表情をしている。
「え、リョウ君…どうしたの?」
「もう全部俺に任せておいて。絶対幸せにするから」
「え?何が、どうしたの?…ってリョウ君!僕のね、部屋の荷物、なんか変なんだけど」
「変じゃないよ、大丈夫だからとりあえず、あとでね」
と言いながらリョウは僕の靴を脱がすと、そのままベッドに倒れ込んできたのだ。
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