金の花、降る、ふる (Page 3)

「やっ、や…、はな…して…」

舌と口全体を使って大きく動かされ、手を添えられて扱(しご)かれる。絶え間なくやってくる刺激に、初めてそんなことをされた僕はどうすることもできなかった。
与えられた快感にすっぽりとおぼれてしまった…。

「ああー…、いやぁ…」

ごくりと、男の喉が大きく動いた。
僕の出したものを男が飲み下した…、とんでもない事実に目じりが熱くなった。

「睦言(むつごと)での『いや』は、『いい』という意味なんですよ」

熱い息が内ももにかかるのを感じた。

「晴海もしきりに『いや』と言っていました。うっとりとした顔で…、そう、今の秋生くんのように」

膝の裏に手を当てられ、両脚がお腹につくくらいに深く折り曲げられる。誰にも見せたことのないところが、今、男の目にさらされている。

「泣くほどよかったですか? もしかして…初めてですか?」
「な…、なんで、こんな…」

初めても何も、女の子との経験も少ないのに、男とだなんて…。しかも初対面で!
涙を飲み込んでしまって、言葉がうまく出てこなかった。
濡れた頬をひやりとした手のひらで包まれる。

「晴海から話を聞いているのでしょう? 私に抱かれることは、この家を継ぐものの役割なのですよ」

…抱かれる?
予想もしていなかった言葉に頭がくらくらした。

まつ毛の先を食まれるように、軽くくちづけられる。

「…その表情を見ると、全部は話さなかったようですね。…晴海はひどいでしょう。私がここに来られないときにいなくなった。本当に…」

小さく吐いた息がどこか苦しそうに感じられて、どうしてだか胸の奥が痛くなった。
どこの誰だかわからない男に突然抱かれて…、僕は怒っていいはずなんだ。
なのに何もできないのは…。

酔いが回っているからか?

男は口角をきれいに上げて笑った。琥珀色の瞳が暗い光をともしている。

「秋生くんは何も心配することはありません。私が今宵(こよい)からゆっくりと教えてあげます」

快楽を、と。

すでに達してしまった僕のモノに唇を落とされた。舌先で刺激されて、声が上がってしまう。男が触れたところから甘いうずきに侵されていく。

「存分に愛してあげます。来年が待ち遠しくなるぐらいに」

柔らかな音を立てて男の着物が落ちた。細身ながらしっかりと筋肉のついた体に、興奮を表す逞(たくま)しいモノが見えた。
男が体を落とす。肌に当たったその大きさに体が震える。

男の唇も手も脚も…、体は冷たいのに、宛(あて)がわれた男のモノだけは熱い。その熱さが金木犀の香りとともに、さざ波のように僕の肌を走った。

…僕の中がゆっくりと開かれる。
男が体を進め、甘い息をこぼすたびに、僕の目の中で月明りに照らされた金木犀が映った。
ゆらゆら揺れる金木犀から金色の花が、ぱらぱらと降り注いだ。

Fin.

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