その王弟、臆病につき (Page 6)
眠るヒュールの頭をなでながら、オーリは小さく自嘲する。
流浪の踊り子たる母から継いだ肌色は、蛮族の証と疎まれた。戦時中の苛烈で無慈悲な行動におののかれて、他人は遠い存在で当たり前だった。それ故か、オーリの色彩を目の当たりにして、おびえるでもなく、照れたその顔がかわいくて、そばにいてほしくなった。そして今は、少し怖い。
ヒュールがわかっていることを、黙って待ってくれていることを、知っている。だけどまだ、二人の未来を乞うために、一歩が出ない。
「ごめんね、…もう少し、待っててね」
臆病な王弟は微笑んで、眠る青年に口づけた。
Fin.
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